31 お迎え
その日は朝から掃除や料理にと忙しくしていた。
「お爺ちゃんとお婆ちゃん、何時の電車だっけ?」
妹は兄に尋ねた。
干していた来客用布団を取り込んでいた兄は答える。
「ああ……そろそろだな。道に迷うといけないから、駅まで迎えに行ってくれないか?」
「下ごしらえまだ終わってないんだけど」
暗に自分が行けと主張する。
祖父母に出すためのおもてなしの料理の為に、妹は朝から台所に立っていたのだ。
兄はその間泊めるための客室の準備やら、居間などの掃除に精を出していた。
もともと普段からこまめに掃除しているから、大したことではない。
「それはお兄ちゃんが代わりにやっておくから、いいよ。掃除はもう終わるしね」
「あたしじゃなくて、お父さんに行ってもらえばいいじゃない。何にもしてないんだから」
2人の父は朝からずっとそわそわして、子供らの手伝いをしていたのだが失敗ばかりなので、邪魔だと追い払われてしまっていた。
「父さんはあれでいいんだよ」
「でも……」
「いいからいいから。朝から働きづめでくたびれただろう? 気分転換も兼ねて。な?」
兄の勢いに押され、妹は渋々頷いた。
釈然としないながらも妹は素直に家を出たのだった。