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30 一生のお願い
「頼むよ。一生のお願い!」
手を合わせて従姉妹は兄を拝む。
兄は難しい顔でそれを見ていた。
「いい加減しつこい」
「だって、最後なんだ。もう後がないんだぜ」
「知るか」
「ささやかなお願いだろ? 何で駄目なんだよ。お前なんて部員全員の為に弁当作らせてたじゃないか」
「あれは不可抗力だ。元はといえば父さんが無理を引き受けてくるのが悪い」
兄は憮然とした。
「お弁当もって応援に来てって、すっごくささやかなお願いじゃないか。高校最後の大会なんだから、ちょっとくらい我儘言ったっていいだろ?」
「俺に言うな」
「お前のせいで”全く”愛しのハニーに近づけないんだから、お前に頼むしかないじゃないか」
ハアーッと兄はため息をついた。
「……条件を飲むなら、考えてもいい」
従兄弟はパッと顔を輝かせた。
「飲む飲む! なんだって聞くよ!」