27 認めません
押し問答の末、結局押し切られ、止める事となってしまった。妹はそのショックのあまり、部屋に閉じこもっている。
「あああ、婚約者殿の手料理が食べたかった。何でお前の色気のない料理を食わなければならないんだ」
兄の手料理を腹に収めながら、そいつは1人嘆いている。
「お前は単なる従兄弟だ。婚約者だなんてデマはいい加減に止めろ」
「デマじゃない。みんな賛成しているじゃないかっ!反対しているのはお前くらいなもんだぞ。爺ちゃん婆ちゃんに叔父さんから許可もらってる」
「手順てものがあるだろう。本人の意思を無視して話を進めるんじゃない」
そいつはニヘラッと笑った。
「そりゃ外堀を埋めるのも作戦のうちだし」
「だから一ミリたりとも埋まってないと言ってるんだ」
その言葉に馬鹿は流石にへこんだ。
「それはお前が反対するから~」
「関係ないな」
兄はせせら笑った。
「いい加減認めてくれてもいいだろう。何がそんなに気に食わないんだ?」
「全部だ。特にその軽薄なところが最も気に入らん」
「軽薄って、酷いな。俺は溢れんばかりの、この愛を叫んでいるだけだぜ?」
「どうだか」
「本当だって。信じてくれよ。俺は幼稚園で一目ぼれしてから、以来文ちゃん一筋。浮気なんて絶対あり得ません」
自称婚約者の従兄弟は必死だ。
「俺ってば結構優良物件だと想わないか?モデル業して収入だって結構あるし、貯金だってしている。スポーツマンだし、ルックスだって悪くない。卒業したらプロに転向する予定だし、嫁さんとついでに子供の2・3人ぐらい楽勝で養えるぜ」
「この色ボケが。いい加減諦めろ」
「そっちこそそろそろ折れてくれてもいいだろ」
「却下だ。何があってもお前だけは認めん」
「何でだよ」
従兄弟は流石にムッとした。
「初対面の時自分が何したか忘れたのか」
「忘れるはずがないだろう。美しい一目ぼれの思い出なんだから」
「美しい?いきなり押し倒してキスする変態行為が、美しい思い出だと?」
「俺も若かった。つーかむしろガキだった。つい溢れるこの想いがとめられず、他にその表現する方法を知らなかったんだ。幼稚園児なんだし、大目に見てくれよ」
「あの時以降も、お前が顔を合わす度に追い掛け回すから、妹は同世代の異性に異様なほどの苦手意識を持ったんだぞ!お前は妹の人生を滅茶苦茶にするつもりか!」
「悪いなって思ってるけど、しょうがないだろう?俺もガキだったし、溢れんばかりのこの愛を叫ばずにはいられなかったんだ」
「その薄ら寒い台詞を止めろ」
兄は従兄弟の頭を思いっきりはたいた。