03 ハーレム
受かってしまった。
学校への道のりで、特大のため息をついた。
今日は高校の入学式。
兄の思惑通り、青凛に受験し、受かった。
青凛はここらでは(といっても、通える範囲内ではだ)一番の進学校。
他にも第二志望校に受かったが、やはり人情としては少しでも良い所へ行きたいと思うもので、そちらは入学を辞退した。
よって、今日から青凛生となる。
兄とは学校で会っても他人の振りをしようと心に決めている。
中学と違い、家族構成を知っている人間はまず居ないだろうから、多分大丈夫……だと信じたい。
お決まりの手続きをへて教室に入ったが、会話する相手も無く教室の隅の机に座った。
幾人かは知り合いが居るのか、廊下や教室の入り口で何人かで固まっておしゃべりしている人間がいる。
それを羨ましげに見やる。
兄にはあれだけ言いたい放題が出来るが、それは兄に対してだけであり、外では自分の意見を表明する事も難しい、内弁慶だった。
教室内に仮の担任だという教師が入ってきて、体育館へと移動した。
順番に列を作って入場する。
父は仕事で忙しいので、父兄席には誰も居ない。
兄が暇ならば、ビデオ片手に撮影しているだろう事が目に映るのだが、兄も在校生として出席しているからそんな心配は無い。
興味も無いので目を向けることさえしなかった。
式は特に何の問題もなく進んだ。
来賓や校長の話が長くて眠くなったがその程度だ。
上級生の挨拶の段になり、愕然と目を見開いた。
目蓋が落ちかけていたが、その眠気も一気に吹っ飛んだ。
兄が壇上に上がってきたのだ。
やたらと外面の良い兄は、更にパワーアップして生徒会長として君臨しているらしい。
そんな事知らされていなかった。
知っていたら何が何でも第二志望の学校に行っていた。
おのれクソ兄め、と心の内で悪態をついた。
担任の紹介なども終わり、教室に戻る。
生徒会長カッコイイね、等という砂を吐きそうな声が女子の間から漏れ聞こえてくる。
会話する相手もおらずポツンとしていると、同じ様に一人で所在無くしている相手と目があった。
ボブカットのハッキリした顔立ちの女子だ。
……とりあえず、知り合いを一人ゲット。
翌日の注意事項などでその日は解散。
知り合いになった女子と連れ立って駅に向かって歩いていると、女の子に囲まれている兄を見つけた。
ハーレムまで築いてんのかよ!
あのクソ兄め!と、横を歩く女子の手前、内心で思いつく限りの言葉で罵った。
入学初日から青凛高校を選んでえらく後悔した妹だった。