18 似てないねB
だからいらないといったのに。
妹は心の中で悪態をついていた。
兄に強引に持たされた日傘も、扇子も、どちらもクラスメイト達にとられてしまって、手元に無い。
内弁慶の妹は、貸してと言われては素直に渡してしまうしかなかった。
こうなる事が目に見えていたので、荷物になるから持って行きたくなかったが、兄に強引に押し切られてしまった。
日焼け止めだけはしっかりとつけてあるから、それだけは感謝しても良い。
入学式の日に知り合った友人は、嫌なら断ればいいのにと呆れていた。
ボブカットの彼女と妹はかなり気が合って、そろそろ入学して1月が経つがよくつるんで行動していた。
互いに地味系、引っ込み思案である上に、歯に衣着せぬハッキリした物言いをするところが似ていた。
同じ大人しい系の女子からは敬遠されるタイプで、その辺で妙に気があっていたのだ。
トントンと肩をたたかれ、妹は振り返った。
ウゲッと内心で呻く。
外行きようの笑顔を浮かべた兄が立っていた。
「”忘れ物“、届けに来たよ」
とお弁当サイズのクーラーボックスを差し出す。
朝、あえて持っていかないと言い張って置いて来たものだった。
「ありがとう、お兄ちゃん」
兄が引き連れていた取り巻きから、ものすごい凶悪な視線を向けられている。
兄妹と知られたくなかったが、取り巻き連中から睨まれるのもいやだった。
断腸の思いでお兄ちゃんと呼びかけ、礼を言った。
家に帰ったらぶっ飛ばす。
兄の満足げな笑顔を眺めながら、妹は心の中で決意していた。
「妹さん?」
兄の取り巻きの一人である副会長は訝しげに尋ねる。
兄はご機嫌のまま頷いた。
「……似てないわね」
その素直な感想に、妹は大満足だった。
ニンマリと笑みを浮かべた。