14 お礼? 2
「妹ちゃん、邪魔しちゃってごめんね。もうじき片がつくから、あとちょっとだけ居候させてね」
兄の拾ってきた彼女は、ぽややんと礼を言う。
彼女はずっと妹の部屋で寝起きしていた。
「気にしてない」
妹は口を尖らせてそっぽを向く。
内弁慶な妹は、兄の拾ってきた彼女にも強く出られない。
せいぜい照れ隠しにつんけんしてしまう程度だった。
彼女はニコニコとそれを見ていた。
「お礼に、今度あたしがお化粧の仕方教えてあげるわね」
「は?いらないよ別に」
妹は唐突なそれに、困惑しながらも断った。
「遠慮しなくてもいいよ」
彼女はウッフンと色っぽくウィンクした。
妹は、引きつった笑みを浮かべる。
「い、いいよ。必要ないし」
「大丈夫。これでもメイクアップアーティストの母さんに仕込まれた腕なんだから、どんと任せて頂戴」
「そうじゃなくて、化粧に興味が無いんだってば」
「知ってる。だけどお兄さんからも頼まれてるんだ。粗を隠す化粧術、男を悩殺する勝負メイク、チャームポイントを引き出すポイントメイク、学校にしていっても大丈夫なナチュラルメイク、舞台にだって立てるような本格メイクまで、手取り足取り教えてやってくれって」
大人しく聞いていた妹の額に青筋が立った。
血相を変えて部屋を出て行く。
『クソ兄キー!!』
『どうした、いもうぶふぉあああ!』
ドンガラガッシャーンと景気のいい音が響く。
「あはっ、やっぱりこうなった」
階下から響くやり取りに耳を済ませていた彼女は、悪びれることなく呟いた。
妹の息もつかせぬ怒涛の怒鳴り声が続く。
「だから止めといた方がいいって言ったのに~」
クスクスと彼女は楽しげに偲び笑った。