12 お礼?
ドンがらガッシャン。
突然響いた騒音に、妹は飛び起きた。
何事かと音のした台所に駆けつけると、先日兄が拾ってきた人間が立っていた。
その足元には鍋やらボールやらが散乱している。
彼女は唖然とする兄妹に向かいヘラリと笑う。
「失敗しちゃった」
兄と妹は朝っぱらからせっせと片付けをする羽目になった。
散乱する調理器具を拾い集め、洗ってもとの場所に片付ける。
食材の成れの果てがこびり付いた流しや調理台の上を綺麗に拭き清め、床に落ちたゴミを箒で集める。
ようやく朝食が食べられるようになった頃には、お弁当を作る時間など無くなっていた。
そして食卓の上にはナゾの物体が。
見た目はちょっと……いや、かなり不吉だが、元はなんら問題ない食材。
火はしっかりと追っているようだし、大丈夫だろうと兄妹は食卓に着いた。
「「頂きます」」
律儀に手を合わせ、それを口に含んだ。
「「!!???」」
兄と妹は目を見開いた。
「う~ん、まずまずかな?」
1人彼女はのんきに呟いている。
「あれ?どうかした?」
ビシリと動きを止めた兄妹を不思議そうに見た。
「ゲロマズ」
妹は心からの言葉をこぼした。
「妹よ。女の子がゲロマズなんて言うんじゃない。ちゃんと美味しくないと言いなさい」
すかさず妹の言葉遣いを訂正する兄。
「そうかな?普通じゃない?」
「「普通じゃない」」
兄妹の声は、はもった。
「泊めて貰ったお礼をしようと思ったんだけど……」
「「やめて。マジで」」