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11 捨てて来い Part2
「捨てて来い」
「いや、しかしだな、妹よ」
「しかしも案山子もない。さっさと捨てて来い」
兄の言葉など聴く耳を持たない妹に、兄は困り果てていた。
「可哀想じゃないか。こんな雨の中で外に放り出すなんて」
兄の隣で二人のやり取りを困惑気に見ていたその目は、哀れっぽく妹を見上げる。
その眼差しに妹は一瞬怯むが首を振る。
「駄目と言ったら駄目だ。犬や猫ならまだしも、人間を拾ってくるとは何事だ!」
「だって、行く当てがないって言うから」
「だってじゃねえ!」
兄を怒鳴りつけた。
キッと兄の傍らの人物を睨みつける。
「アンタもアンタだ!見ず知らずの男にほいほい付いて来るんじゃない!何があるかわかんないだろうが!」
いつかどこかでした会話だった。
つーか、つい先日のことだ。
「まーまー。そんなに怒ると禿げるよ」
兄の拾ってきた彼女は、のんきに妹を宥める。
話がまるで通じてない!
妹はがっくりと脱力した。
「火事で焼け出されて、可哀想だろ?お母さんが退院するまでのちょっとの期間だし、いいじゃないか」
「テメェが言うな!!」
妹のニーキックが兄に炸裂した。