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兄と妹  作者: ゆなり
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01 なんてことをしてくれんだ

 母は離婚していない。

 所謂外に男を作って出て行ったという状況だ。

 小学生の時だった。

 兄は中学生。

 その兄は普通ならぐれるべき所を、逆に優等生になってしまった変り種だ。

 もともと成績優秀でスポーツも出来た兄。

 外では真面目で堅物な人間になった。

 そして何を考えたのか、家ではオカンとなった。

 サラリーマンの父と兄との3人家族になり、最も問題になったのは家事だ。

 忙しい父に家事をさせるのは忍びないと、兄と二人で分担した。

 間違っても兄1人に押し付けてはいない。

 なのに、兄はオカンとなってしまった。

 いつも首を傾げてしまう。

 何ゆえ?

 むしろ家事なんて放棄して、不良の仲間入りする方がよほど普通な気がするのに。

 文武両道品行方正等など美辞麗句の4文字熟語の賛美の嵐を受ける兄は、外で会うとまさに別人。

 正直家を出たら他人の振りをしたい。

 が、中学が同じで、こっちが1年の時に兄は3年。

 嫌でも顔を合わせたものだ。

 そして同級生上級生問わず、兄にと言ってプレゼントを持たされたことも数限りなく。

 ウッわマジで砂を吐きそうだ。

 家での役割分担では、洗濯は兄にはさせない。

 なぜなら下着を触られたくないから。

 食事のしたくは大体半々。

 洗濯をこっちがやる代わりに、兄には掃除を押し付けてある。

 もちろん各自の部屋は各自でやる事は了承済みだ。

 つーか、兄に部屋に踏み入られて、あれやこれやと弄られたくない。

 当然の選択だ。

「ところで兄よ」

「改まってなんだね、妹よ。あとお兄ちゃんって呼べ」

「ざけんな。なんでこんな問題集を解かなきゃならんのだ。つーか自分の勉強をしろよ」

「お・ば・か・さん☆。お兄ちゃんはお前が高校受験を失敗しないように勉強を見ていてあげているんじゃないか」

 兄の言葉にイラッとした。

「第一志望校は十分合格範囲内。余計なお世話だ」

 内申書も模試の結果も申し分ない。

 油断するわけじゃないが、簡単な復習で十分だ。

「ダメダメ。青凛は今の成績だとすこーし危ないんだ」

 青凛は兄の通う高校だ。

「あ゛?んなとこ行かんわ、ボケ」

 ヤンキーチックな声が出てしまった。

「ああ、ちゃんとお兄ちゃんが第一志望を書き換えておいたから。そろそろ受験票送られて来るんじゃない?」

「んだとぉ!?何してくれてんだ!!」

 兄の胸倉を掴みあげた。

 既に受験申し込みは終わっている。

 あと半月ほどで試験があるはずだった。

 絶対に、何があっても兄とは同じ学校に行くつもりなどなかったのに。

 そのために第一志望校に、兄の学校と同じ受験日のものを選んだのだ。

 もちろん、兄の学校を受験しないためだ。

「さ、勉強勉強」

 ヘラリと笑う憎たらしい顔に、思いっきりこぶしを叩き込んでやった。

「ふざけんなぁぁぁぁああああ!!!」

 結局、その日は怒りのままに暴れまくり、勉強は全く進まなかった。

 翌日、兄はヨレヨレのボロボロで学校へ行く羽目となった。

 もちろん妹の愛の拳を受け止めた所為だ。

 ふん。ザマーミロ。

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