初めてぇーのー授業 基礎の授業 長すーぎ意味不〜
講堂に教師が立ち生徒達が教書とノートを広げ鉛筆を握っていた。厳つい先生は太い腕に教書を載せている。
「今日は基礎教養の復習だ。降光災害によって人類は光に蹂躙された。時間にして凡そ1時間。瞼を閉じていても強い光が永遠と続き全てを飲み込む。何をしても、だ。実際に気の狂ってしまった者もいたという。
それが変革の1時間。草薙では降光災害と呼ばれ他ではピュクシス・レイなどと呼ばれるこの星に降り注いだ強制的な変革だ」
教師はなんて事もない様に教科書を捲り。
「その際に降った粒子がこの星の様々な原子と結合し、特に生物の細胞を構成する原子に結合した粒子は結合した生物、それら全てに大規模で異常な変化を齎した。
特にサイクルの早い虫などは顕著でいの一番に怪物に成り果てている。その為に当時はパンドラ粒子や怪物化粒子などと呼ばれ、それは様々な生物の肉体と関係に否応無い変化を強要していく。
例を挙げれば1cmに満たないハエが倍々に巨大化していき人の腕の様な足を生やす様な変化は驚異的で脅威的だったという。その変化というのも単純な者では無く、昆虫部分の角皮は非常に硬くなり、弾丸の様に飛び回る化け物へと変わる形だ。害虫駆除等という生やさしい話じゃなくなったそうだが然もありなんだな」
世成としては意外な事に大半の生徒達が興味深そうに聞いていた。興味のわかない設定集とか聞かされた様な顔の者もちらほらいるが。世成も異世界の話でなければ多分に後者だった可能性が高い。
「当然だが私達人間にも影響を齎した。ただその発見までには随分と掛かったそうだ。それまでは酷い物だったと言う。
他の生物が人間に近づく様な形状的変化と合わせて科学を全否定する特殊能力や身体器官を発生発達させる中で人体には変化と言える変化はほぼ無かったからだ。
まぁあくまで他生物と比べてと言う話であるが大きな妖に対応出来る程では無く研究が続けられた」
教書には当時の資料っぽい物や写真が載っている。研究者や軍人などの顔もあった。彼等の献身が羅列する。
「さて知っているだろうが結論から言うと私達の肉体的変化が少ない代わりに得た能力は私達らしい物だ。人類は他生物以上に感応粒子に干渉出来る能力を得たという事だった。
先ず発見されたのは粒子を道具として用いる事が出来る事。厳密には物体に対して感応粒子の接合と分離などの加工が可能だった。石器を用いる事で生物としての覇権を築いた何とも人間らしい変化と言えるだろう。
もう一つが粒子の吸収と変換。これは食事で栄養を摂る事に近い。これに関しては他の生物も似た様な能力があるが、ただ人類は抜きん出てて吸収能力が高かった。佩刀式がそれに該当する。また逆を言えば佩刀式無くして人類は妖と戦えない」
要はキショいバケモノの発生理由と不思議パワーの出所である。メッチャ光降ってきて、バケモンが発生し、何か色々出来る様になった。とどのつまりはそれだけの話。
教師も淡々と続ける。最初に授業故の最低限の基礎教養。ただメッチャ長い。
「さて、それらの怪物。妖の発生により人は減り数多の国が滅んだ。だがその国の残骸の一つが現在ヤマタノオロチと呼称される妖の尻尾から一振りの剣を作った。それが此の草薙の成り立ちだ。以上が基礎教養である。
次の時間では数学として弾道計算の初歩の初歩を教えるので教書を準備しておく様に」
世成は立ち上がり身体を伸ばす。そしてふと横を見てギョッとした。笹竜胆黎明がヤバい。
「おい大丈夫か?」
問えば笹竜胆黎明は驚きの表情を返す。周りも少し騒ついたのは気になるがさておき眼鏡のブリッチの部分を指二本で押し上げ。要はクイってしてから。
「大丈夫に決まっている。随分と度胸があるな君は」
疲労と、少し赤い顔。不満なのか辛いのか。そんな顔だった。
「あー何かマズったっぽいな。すまん。常識が無さすぎて。でも頭から湯気なんて出してたら気にするって。何、熱でもあんの? 体調不良かってな」
「……湯気は出ない。話が長くて聞き疲れた。僕は難しい話を5分以上聞けないんだ。要は知恵熱だよ」
「今ので?!!」
「……う、そ、そうだ!! 悪いか!!」
「いや悪く無いけどお前。そんなメガネしといて嘘だろオイ。似非メガネじゃん」
「似非メガネ!? なんて事言うんだ!! これは、その、昔からの癖さ!」
「あー、ね。だいたい佩刀式以降は眼鏡なんて無くても物は見えるだろって思ってたから。寧ろ見え過ぎて疲れたし。
……うん? やっぱ似非眼鏡じゃねーか!! 騙したなメガネ!!」
「騙しては無いだろ!!」
「確かに!!」
笹竜胆黎明はすっ転びそうになった。凄い気の抜けた顔で「すまんすまん」とか言ってる同室の男、自分以上に浮世離れした雰囲気のある相手。測りかねるのは仕方ない。
何せ四大貴族を知らないかの様に振る舞うのだから。そんな者は今まで居なかった。当然である。
まぁそら世成は四大貴族とかマジで知らんのだけど。存在は知っててもそんなの居るんだくらいのテンションでしか無い。強いて言えば大紫院のイメージで飴くれる人だ。
「まぁ仲良くしようぜ。お前いつも部屋で黙りこくってて怖いし。なんかオバケっぽい」
「……そんな風に思ってたのか君は」
「せめて本とか読んでればギリ分かるけど空き時間ずっと座禅組んで瞑想は何かコエーよ」
「本なんて五文字で読む気が失せる」
「……ガチで言ってんな。それマジで大丈夫かオメー」
「……」
「いや自覚あるんかい。顔逸らすなオイ」
で、午後。生徒が整列する前で眼鏡でモシャモシャ頭の弛緩した雰囲気の先生が訓練場に立っていた。
先生の背には沢山の鞘が並んでいる。また横には帯と階級章の様な物があり生徒たちはソワソワしていた。世成は何事かと耳を傾ける。
「刀を出現させる事。これを顕わす刀と書いて顕刀というんだ。逆は収める刀と書いて収刀だね。まぁ剣刀士は基本的に顕刀状態で帯刀するから忘れてくれていいよ。
じゃあ、ベルトと鞘を配るからこれからは常に顕刀してね。それが身分証みたいなものだから。
寧ろ剣刀士の身分で顕刀してない方が怪しまれるから寝る時や必要な時を除いては常に刀を佩く様にね」
教師の言葉に従って全員がベルトを巻いて刀を出し鞘を受け取り佩刀する。
「じゃあ、先ずは受け身の取り方からだね。地面に着く瞬間に地面を叩くんだ。衝撃を緩めて頭を打たない様に」
地べただが柔道の授業とかやった事がある人は見覚えがあるだろう動きを繰り返す。
背を丸めてしゃがみ、後ろに倒れて、両腕を広げる様に両手で地面を叩く。寝転がって、寝返りを打つ様にして片手と両足で地面を叩く。両膝を突き、両腕をハの字にして、前に倒れて、身体を支える。
自主的に繰り返させながら先生は生徒達に時折コツや間違いを教えてつつ。
「受け身は何より大事だから調練の前は必ずやる事。それと明日からは軽くランニング千キロ、腕立てと腹筋はそれぞれ千回、素振り一万回、今はいいけど印地が使える様になったらそれも必要だよ。
まぁ、最初だから軽い物だけど全部合わせて十五分で済ませるように。いいね?」
生徒達が「はい!」と声を揃えた。
「戦技課程では体術、剣術、行術、各種軍用機運転技術が基本になる。じゃあ、これより調練前の鍛錬について教えるから受身終了」
また生徒達が「はい!」と声を揃えた。
こんな感じで午前に座学があり午後は実技という日程を繰り返す。そんな日々を過ごしていき一年の最後に遠征が開始された。これは行軍や衛戍府及び鎮護府の外に慣れる為だった。




