05
闇夜に鉄の臭いが漂う。懐紙で刀についている臭いの原因を拭き、鞘に収めた。そして、再び屋根の上に戻る。それを見計らったように、雲が風に乗ってゆっくりと移動し、再び紅い月が顔を出した。同時に、銀に輝く肩までの切りそろえられた髪がゆらゆらと風になびき、妖艶な紅い瞳が不思議なほど夜の闇と同化していた。ふと目線を下に映すと、さっきまで目の前にいたはずの化け物は一瞬のうちに石化すると、サラサラと風化してしまった。だたそこには、どす黒い返り血を浴びた少女と血鬼のいた場所に若い女の無惨な残骸のみ――。しかし、月明かりできらきら光る砂は、一同を魅了していた。
さてと、どうしたものか。追ってきた血鬼は、いとも簡単に倒せたが、それよりもこの集団の方がてこずりそう。
「いい目をする狼に育ってくれたのはいいけど、私の前を阻むのはよくない。」
『それを、自分勝手という。』
「まさか君たちが参加していたとは思っていなかったけど。」
『それを、縁という。』
「・・・さっきから、何!喧嘩売ってんの。」
『ううん、この状況下で珍しくノリノリで逃げずにいるいつもと違うキミに感動しているだけ。この短時間で随分と成長したじゃない、煌妃。』
「―――うっさい。」
「お前一体何者だ!」
「ふん、答える義理も無い。名乗ってほしいなら、貴様から名乗れ。」
あくまでも上から目線なのは変わらない。
『どんな状況でもキミは。』
「さっきの化け物はどうした。」
土方と呼ばれていた男が、私に向かって言った。他の隊士が動揺を隠せないでいる中でこの冷静さ――面白い男だ。自然と笑みがこぼれる。そう感心したのも束の間、自分の手にべっとり付いているモノに眉をひそめた。着物が気持ち悪い。ひどい死臭がする。ついさっき、斬ったのだから仕方ないが、今日は一段と臭う気がした。
「染みついちゃったのかな・・・。」
とぼそりと言うと再び私は屋根から飛び降りた。それと同時に、白空も肩から降りると土方と私の間に割って入る。白空、かわいい。守ってくれているとかちょっと感動だよ。でも、そのおじちゃんには近づいちゃダメだよ、と心の中で言ってみる。そんなことを考えていると、再び土方が声をかけてきた。案の定、彼らの手は、脇差しにある。
「流石、武士になろうと思ってるヤツだね。腹が座ってるのが気に入った。」
「お前は・・・?」
「今話題の白狼ちゃんです!ハジメマシテ。土方歳三さん。」
とりあえずここは、愛想良くにっこり笑っておくに限る。これは、最近身についた"営業スマイル"という処世術だ。聞き込みやら、花街に行くことが増えたことで自然に身についた最近の能力の1つだ。
「あっ!今朝届いていた手配書の中に確か・・・あっ、ありました。コレです。えーと、世にも珍しい――白髪と赤い瞳。夜に出没することが多い。肩には子猫があり。罪状は、人斬り。」
月明かりを頼りに男が、目を凝らしながら手配書を読み上げた。煌妃は、口を半開きにさせながらその様子を見つめていた。




