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紅の月 - 物語を紡ぐモノ -《 上弦の月 - 第一部 - 》  作者: ぼんぼり
第参夜

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「天城さん、土方さんに呼ばれているのではないですか?」

「あっ、そうです。そうでした!では、失礼しますね。」


 そう言うと、急いでその場を煌妃は去ろうとした。さっさと逃げるが勝ち、あそこに長居したら斎藤に何か気づかれてしまう。そんな風に思える目をした男だった。


「あっ!待って下さい。私も行きます!貴女の報告をお願いされてましたし。」

「オレが自分で行くので、沖田さんは来なくてもいいよ。」

「冷たい・・・斎藤さん、聞きました?天城さんが冷たいです。」


 沖田は、眉毛をハの字にさせながら斎藤に訴えた。そして、斎藤の両肩にのしかかるように背後から抱きつく。そんな様子の沖田に困ったのかずるずると引きずりながら斎藤もこの場から離れようとしていた。それと同時にきれいな弧を描いて飛んで行った“何か”が視界に入ったが、気づかないふりをした。さらに同じ視線の弧を描いた3人の重なった『あ』という声が聞こえたが、ここは本当に静観が正しい。


「沖田さん、いい加減に「「総司!斎藤が困ってるだろ?」」


 永倉が沖田を止めに入る。しかし、当の本人はそれをやめる気はもうとうないらしい。それをからかうように、藤堂と原田はケラケラ笑っていた。


「沖田さん!!あんたって人は・・お前・・連れて行ってやれ。」


 ぐったりした様子の斎藤が言った。これは沖田の根気勝ちというのだろう。斎藤は沖田の両手をつかんでポイっと煌妃に投げ飛ばした。沖田の「斎藤さん~」という弱々しい声と共に突然、沖田を託された煌妃は、斎藤を睨むように目を細めた。煌妃も今回はどうしても沖田を連れて行きたくはなかったのだ。煌妃は一度、空を仰ぐと沖田に目線を移し、白空をダシに使うことを決めた。


「はぁ、報告は自分で行きます。その代わり、沖田さんが勢いで投げ出したあそこにぶら下がっている白空をよろしくお願いします。」

「あらら、すみません。斎藤さんに絡んだ時に思わず投げちゃいました。白空、ごめんね。」


 オイ!!と一同が声をそろえたのは言うまでもない。


『おぅよ!随分高く投げたじゃねーか!オレ様の身体能力が高かったからいいものを!』


 屋根の端にぶらんとぶら下がっている白空にクスクス笑いながら放っておこうと決めた。案外、鬼畜なのかもしれない。囮にするには絶好のチャンスだ。目の前には、屋根を見上げながら必死に白空に謝る沖田の姿があった。


『くそっこのヒラメ顔!覚えてろよ!ちくしょう!足が届かねぇじゃないかよ。』

「あぁあぁ、本当にごめんなさい。ほら、受け止めますから!」


 ちょっとしたお祭り騒ぎだ。煌妃は、そのまま1匹と1人を4人に託してこっそりとその場を離れた。しばらくして、煌妃がその場にいないことに沖田は気づくと今度は沖田が叫び、そこに限界を迎えた白空が落ちた。


「あー!置いていかれた!」

『ふぎゃ!』


 げっそりした白空を頭に乗せたまま沖田は再び斎藤に抱きつき遊び始めた。一人必死になる斎藤をやれやれと思いつつも3人は楽しそうに見て笑っていた。


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