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紅の月 - 物語を紡ぐモノ -《 上弦の月 - 第一部 - 》  作者: ぼんぼり
第参夜

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 暗い闇の中、煌妃は歩いていた。懐かしいこの感覚。そして、優しい水の香り。ここでは、あの人と重ねられている感覚がなくて、自分が自分でいられるている特別な嬉しさがあるって思えていた。だから、ちょっとはこの世界に愛着がわいていたのかもしれない。いつもはこんな失敗はしない。

 今ここに意識があるのはおそらく、傷口の痛さで眠りに墜ちたからだ。あぁ、この心地よい意識の中でまどろんでいたい。それは、赤ちゃんが母親の傍を好むように居心地が良いから。

『いつまでも、あの人に囚われていたくない。あの人は、すごく偉大だから・・・あの人を知る人はいつも懐かしそうに私を見る。私はあの人じゃない。』と夢の中で何度もあの時の映像が繰り返えされる。いつの間にか、煌妃の目の前には白と黒の蝶が舞っていた。そして、静かに『あぁ、来たのか』と今にも泣き出しそうな声で呟いた。


「一座には、お医者様がいらっしゃるんですか!?」

「はい、長旅をするので医学の知識を持った仲間がいるのです。」

「すまんが、よろしく頼む。こちらの事情は・・・。」

「存じております。安心してください。彼女・・彼のことは他言無用に致します。」

「かたじけない。」


 声が聞こえる。沖田さん、土方さんと――。

 白と黒の蝶に近づいていくとゆっくりと、煌妃の意識は現実に戻されていった。


「では、処置を致しますゆえ。」

「あぁ、終わったら、呼んでくれ。部屋で待っている。」

「お願いします。」

「はい。」


 パタンと戸が閉まる音が聞こえた。沖田と土方の気配がないことを確認すると煌妃は、ゆっくりと重いまぶたを開けた。そして、顔を覗いている2人の女の人の名前を呼んだ。


「杏・・花・・。」


 それは、思っていたよりもかすれた声だった。花と呼ばれた女の人は18,9才。まだ幼さが残る少女。また、杏と呼ばれた女の人は30才ぐらいのしっかりとした印象を受ける女性だった。


「姫様、余り無茶をなさいますな。かしらも私たちも常にお側に付いていないのですから。」

「そうデスよ!白空様と途中でお会いしたときは、本当に焦りまシタ。先に里を出てきて良かったデス。」

「ごめん・・なさい。血鬼にやられて、穢れを祓えないでいたの。“龍水”を持ってきたのなら「分かっています!すぐに、背中をお出し下さいませ。」」


 杏は、煌妃の言葉を遮るように言った。煌妃は、ゆっくりと起きあがると上の着物の袖を抜き上半身を脱いだ。そして、固定していたさらしを外すと、傷口を杏に見せる。すると、花は、前から煌妃を包み込むようにしっかりと抱きしめた。


「しみると思いマス。しっかりワタシにしがみついていてください。」


 杏は、綺麗な布を取り出し入れ物に入れてきた液体を染みこませた。そして、それをゆっくりと傷口に当てていく。


「・・――っつつ、いたい。ふぇっ。」

「自業自得デス!」

「冷たい・・花―っ!!」


 煌妃は、涙目で花を見た。その様子を、花はにっこり笑って煌妃に叱咤した。


「これで傷口治るんデスから、蒼樹様に感謝しなければなりませんよ。」

「・・・はい。」


 花の迫力のある笑顔に、煌妃は素直に返事した。なぜなら、花の目が笑っていたかったから。非常に怖い。


 一座の者、そして杏と花は、空也と同じ煌妃の忍の一族である。その一族は、幾千年もの昔から“龍”が地上に棲んでいたとされていた頃から続いていると言われている、正真正銘の忍の一族なのである。昔、“龍”に一族が助けられたことから、その“龍”の末裔を守ることが恩返しだとされていた。この一族は他の忍の一族とは違い、能力がはるかに長けている。現在は、末裔とされている煌妃を守るという使命を担っている。今回は、煌妃が白空を向かわせる前から、隠里を出てきたようだ。

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