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紅の月 - 物語を紡ぐモノ -《 上弦の月 - 第一部 - 》  作者: ぼんぼり
第参夜

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「宮内!!」


 焦った男の声がする。


「次はどなたですか?」


 人を斬ったのにもかかわらず沖田は表情は変わらない。その様子に煌妃は、少し身震いしてしまった。沖田は、やはり強い。昨日、剣を交えて思ってはいたけれど客観的に見るとさらにそう思える。それぐらい速かったし、剣筋が綺麗だった。


「――・・っ。くそっ!」

「永倉さん、原田さん!!一座を!!」


 煌妃は、浪士の行動を先読みして、永倉と原田に指示を出した。案の定、叫んだ浪士は藤堂に向かって斬りかかり、その横をもう一人の浪士が走り込んできた。しかし、沖田がいる反対側を走り抜けたので、とっさに動くことも出来きず、それをカバーするように永倉と原田が走り込んできた浪士の前に立ちはだかる。


「武士の風上にもおけねぇーな!」

「左之助!ここは、俺に任せろ!」

「新八~そりゃーねーだろ。」


 原田は、両腕を首の後ろに回してクネクネ腰を動かしていた。『ある意味、大物かも』と煌妃が呟いてしまうぐらい。流石度胸もある。以前、原田は切腹して死に損なった傷跡がお腹に刻まれているという噂を耳にしたことがある。確かめたことはないが、あながち間違えではないと思った。


「平助!そっちは任せた!」

「あいよ!総司!ここは良いから、一座と天城さんを安全な場所に!」

「承知。じゃ、あとは頼みましたよ。」

「んじゃ、俺も!」

「左之助は、俺らと後始末!」


 まわりと話ながらも、永倉は集中力を乱す様子もなかった。間合いをとりつつも逃げようとした浪士に剣気を放つ。一方、藤堂は刀同士で押し合いをしていたのが一瞬の隙を突いて力を抜き、その拍子でバランスを崩した浪士を横一直線に斬りつける。そして浪士は、前に倒れるようにして膝をついた。


「っく・・・先・・生・・・。」

「?」


 浪士は、藤堂に聞き取れるか分からないような小さな声で言葉を紡ぐと、その場に倒れてしまった。耳が良い煌妃には、その言葉ははっきりと聞こえていた。そして、その言葉を胸の内で反芻すると、その言葉に何か気づいたように口角をあげた。


「天城さん!大丈夫ですか?!」


 沖田の声に、今の笑みを誤魔化そうと、痛いのを我慢して、うずくまっていたように振る舞った。


「うぅ~痛い。」


 それを心配して、再び煌妃に、『あまり動かないで』と沖田の優しい声が聞こえた。


「あっあのう・・・お礼にとは何ですが、荷台を使ってください。壬生寺まで行けば私どもの方で治療できますから・・それぐらいはやらせてください。」


 沖田と余り年の変わらない女の人が話しかけてきた。まだ、容姿は幼さが残っていた。すると、荷台の後ろの方にいたがっちりした男の人が、煌妃に近づくと優しく抱きかかえて荷台の後ろに横たわらせた。その扱いは、まるで女子のよう――。『土方さんがいなくて良かった』と痛みに耐えながらも心で思う。荷台に横になると、煌妃はどこか安心してしまいごめん、と無意識に言ってしまった。


 遠くで呼ぶ声が聞こえる。でも、今は休ませて――そう思いながら目の前は段々と黒い闇に沈んでいった。


「急ぎましょう!あとは、よろしくお願いします!」

「承知!」

「「任せとけ!」って!」

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