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紅の月 - 物語を紡ぐモノ -《 上弦の月 - 第一部 - 》  作者: ぼんぼり
第参夜

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 第参夜 01

「古の泉水に生きし守り人よ。幾重に募る想いを。星に叶えし願いを。ここに集いし彼の名を紡ぎ言の葉に。現に見ゆるは夢見のごとくされど汝の想いは現世に――。」


 10に満たない幼女が2人声を揃えて叫んでいる。



 ――チリンチリン――



 言葉の途中で鈴を鳴らし、不思議な雰囲気を醸し出していた。2人の後ろには大きい荷物とそれを運ぶ男性が3人、きれいな着物をきた女性が3人、男の子が2人いた。その時、『随分と早いご到着だね、その登場の仕方どうかと思うよ』という嫌みと笑みを煌妃はこぼしていた。


「あれは、何でしょう?」


 周りにいる誰もが、珍しいものをみるようにその一座に釘付けになっていた。一座は、歩みをとめる綺麗な顔立ちをした男の子が、額の前で腕を組み、頭を少し下げる。


「我らは、古の泉水からきた旅の一座!今宵、歌姫が壬生寺にて舞いまする。」

「他では見られぬ、逸品!みっ――・・!!」


 そのとき、ザッとその一座の前に浪士が3人、道を塞いだ。それを見ていた町の人たちは眉を細めたにもかかわらず、誰一人助けようとはしない。その様子を見て、煌妃は『賢明な判断だ』と小さく呟いた。


「わしらの道を遮るとはいい度胸しちょるな!」

「無礼討ちじゃ!」

「きゃっ!!」


 浪士の1人が拔刀したと同時に、煌妃は一気にす詰め寄り1打目を防いだ。ガンッと鈍い音が響く。女の子、男の子共に急いで荷台の後ろに隠れた。シーンと張りつめる空気にそこにいたものはみな息をひそめた。


「くっ!お前!何者だっ!邪魔する者は斬る!」

「天城さん!!・・・浪士組、沖田総司!あなた達を捕縛します!」

「同じく、藤堂平助!」


 沖田さんと藤堂さんは、抜刀して不逞浪士に向かって構えた。


「天城、大丈夫か?」

「原田さん、少し傷口が開いちゃったみたいです。あはは。」

「あははっておいっ!」


 煌妃の背中に、液体が伝うのを感じていた。今、自分の背中はうっすらと赤く染まっていることだろう。それでも、煌妃はにっこり笑って平気な素振りをした。


「せっかく、縫ったのにまた開きやがって・・・天城。」


 はぁ、っと溜息をはきながら、永倉が言った。


「永倉さん・・・あの子たちが斬られでもしたら容保候に顔向けできませんよ!」

「えっ?」

「この一座が一定期間、壬生寺で行う演舞を無事に終了できるように、浪士組が護衛することになっているはずです。」

「・・天城さん!それは確かですか!?」

「この一座は、容保公とご縁がある一座です。」


 煌妃は、前方にいる浪士から視線を外さないように間合いをとりながら話を続けた。


「この一座が!?その割には、護衛もつけないで・・・。」


 ツッコミたくなる気持ちは分からなくもない。自分もそう思っていると煌妃は言い出しそうになった言葉を飲み込んだ。


「いつ来るかなど、分からないんです。この一座の頭は気まぐれなので。しかも、一定期間の演舞を終了するとすぐ帰ってしまうらしいので。オレもこの情報を手に入れるのは至難の業でした。」


 飄々と言う煌妃に、沖田達は少し恐怖を覚えていた。そして、改めて白狼という存在を失ってはいけないとその場にいた誰もが思ったに違いない。そんなことを思っているとも知らずに煌妃は、眉を細めながらも背中を心配そうにちらちら確認していた。この行動に、沖田は驚いた目を煌妃に向けていた。刀を構えている相手に向かって、想像以上の余裕を見せているからだろう。

 確認していても相手は視界に入れているのだが--。


 その瞳と煌妃は目があって、沖田のなにやらうずうずしている表情が気になった。その疑問を沖田に聞く前に、その声は男に阻まれた。


「おいっ!!ごちゃごちゃやかましい!!」


 一人の浪士が、沖田に斬りかかる。『沖田さん!』っと煌妃は慌てて叫んだが、案の定沖田の剣筋は綺麗な弧を描き、飛びかかってきた浪士の胸からお腹にかけて朱い液体が飛び散った。


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