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紅の月 - 物語を紡ぐモノ -《 上弦の月 - 第一部 - 》  作者: ぼんぼり
第弐夜

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17

「えっと、そのことに関しては、問題ありません。男だとか女だとか些細なことです。ここで飼い殺しとかもったいない。1日何をやっていたかなんてお見通しなんですよ。」

「脅しか?情報収集は出来ても剣術が使えないなら己の身を守れないだろう。ここは、狼の巣の中だぜ。」


 それと同じく、永倉の脇差しがカチャリと音が鳴る。それと同時に、抱き上げられていた三毛猫の心臓がドキッと小さく跳ねた。三毛猫の心臓は、限界に達してしまうかもれないという考えが浮かぶ。


「やだな~殺気なんて物騒なものも飛ばしてさ。なんなら、力試しでもしましょうか?こう見えても強いんですよ。」


 満面な笑みを浮かべながら煌妃は言った。複雑な空気が部屋の中を漂う。


「近藤さん、山南さん、さっきも言ったように小姓であれば問題ないだろう。」

「そうそう、それでなくともきちんと自分の身は守れます。」

「だが、お前・・・人を殺したことないだろう。」

「永倉さん、優しいですね。でも大丈夫です。そんな心配不要です。」


 相手を射貫くような目で永倉を見つめる。その瞳は、沖田の心の奥にある何かを燻らせていた。それは、お互い求めていたような恋や愛などではないワクワクしたような感情。沖田は目を細めて口がにやけるのを我慢していた。それに気づいた煌妃は沖田と自分はどこか似ているのかも知れないとそう思った。煌妃はフッと自分を嘲笑うかのような笑みを零すと、それを隠すかのように挑戦的な口調で話し始めた。


「今まで血鬼と戦ってきたのは私なんですよ。私が自分の身を守れるぐらい強いってこと土方さんと沖田さんならわかりますよね?」


 土方と沖田に視線が集まる。それを確認するかのように沖田がこくんと首を縦に振った。土方も「あぁ」と肯定したようにつぶやいた。


「そうか・・・よしっ!白狼の入隊を許可しよう!彼女の力をこのままにしておくこともできまい。それに長州の奴らに渡すわけにもいかないからな。」


 近藤の判断に、それぞれの考えのもとその場にいたものはハッと息をのんだ。何かを察したものもいただろう。


「・・・近藤さんがそういうなら。」


 と永倉が言うとこの話は終わった。


 煌妃は、ここに入ってから何か違和感があった。新参者が現れたときの特有な雰囲気だろうと思っていたが、今になって、その答えがやっと分かった。ここには本当に試衛館側の人間しかいない。もう二人、近藤と同じ立場にいる男がいたはずだ。


「失礼だと思いますが、あの男はここにいらっしゃらないようなのですが?」


 あの男、そう煌妃が口に出すと近藤をはじめ山南、土方の目が一瞬揺らいだのに気づいた。〈あの男〉で連想できるほど追い詰められているってこと?何かある、と気づかせるのには十分だった。


「・・・斎藤一。」


 煌妃は、その空気を変えるべく考えていた男とは違う男の名を口にした。すると、3人が思っていた人物と違う名前が出たことに、安心したのか小さな安どの溜息が聞こえた。


「・・斎藤は今、見回りに行っている。」


 少しぎくしゃくしながら土方が言った。煌妃もそのことに気づかないふりして答える。


「そう、結構有名だから会ってみたかった。」

「へ~、一がねぇ。何で有名なんだ?」


 原田は興味深い目を煌妃に向けたが、まさかここで興味を持たれるとは思っていなかったので、煌妃はすぐ話題を変えることにした。ここで斎藤一の話題はまずい。理由はまだ分からないけど里で口を酸っぱくして何度も念押しされたんだもの。


「何言っているんですか。原田さんだって、有名ですよ。花街で色々おもしろいことしているんじゃないですか。」


 無邪気に笑いながら煌妃は言った。そして、『具体的に言いますか?』とニコニコ笑いながら付け足した。それを見て、原田は苦笑しながら右手で静止する素振りを見せた。なぜなら、原田の目には、『つまらないですね』と答えた煌妃の笑顔の裏に、閻魔がちらついたのかもしれない。相当焦っていた。


「・・・入隊の件ありがとうございます。早速なんですが、どなたか試合していただけませんか?いい牽制にもなると思うので。」

「では、私が立候補しても良いですか?昨日の続きと言うことで!」


 きらきらした顔つきで沖田は土方を見た。そして、煌妃に目を移した沖田の瞳に、『言ったでしょう。貴女なら大丈夫だって』と言われた気がした。


「・・・そうだな。その方がいいだろう。」

「しかたねーな。近藤さんが決めたことなんだ。俺らは従うぜ。」

「そうだね。でも、白狼って呼ぶわけにも行かないよね。名前は・・・?」

天城朔てんじょうさく。それが、この姿の時の名前です。」

「?」


 沖田が、不思議な顔で煌妃を見ていた。何か違和感あったって顔してる。天然なんだか鋭いのかよく分からない人だな。


「ふむ。天城くん、よろしく頼むぞ。」

「はい。」


 近藤に一礼すると、ちらっと土方を見た。それに気づいた土方は、怪訝そうな顔をしたもののうなずく。


「このことについては、口外無用だ。では、解散!」

「沖田さん、この猫お願いしますね。」


 ちょこんと沖田の両手に三毛猫をのせた。その様子を見て沖田はにっこり笑うと、『先に道場に行っていますね』といって部屋を出て行った。素早い。昨日のケガもあるしすぐ試合できないって言いたかったのに。消化不良を起こしている煌妃だったが各々が、部屋を出ようとしたときに土方がまだ話が残っていると目で合図を送った。


「山南さん、近藤さんちょっと話がある。それに、天城。」

「なんだい?土方くん。」


 土方を、横目で見ると自分から話すようにと言われているようで気にくわなかったが、仕方なく煌妃は、他の人が出て行ったのを確認すると話を進めた。

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