第33話 国王業務? そんなもの忘れちまったぜ
ガルフ・ライクドは最近武道大会と言う物に興味が出てきた。
ので、テイマド領地の宿屋にて宿泊していた。
次の朝、闘技場に赴いてみると、受付嬢の女性がこちらを見てくすりと笑った。
「そこの15歳くらいの少年? 武道大会のお客様?」
「そのつもりではなく、武道大会に参加させていただきたく」
「へぇ、そのぼろっちい剣で戦うの?」
「これは父上から授かった形見みたいなものなのです」
「そう、じゃあ、この書類に書いてね、ふふ、死ぬかもしれないけど良いの?」
「死ぬのは怖いですけど、全然平気です」
「は、はい?」
「俺はいつも死と隣合わせの生活をしてきたので」
「そんな可愛らしい顔をしておいて?」
「まぁ、普通の少年なんだろうけど」
ガルフは受付に名前を書く。
「えーと、ガルフ・ライクド? 偽名はいけませんよ」
「偽名じゃないんだけどな」
「どうせ同姓同名なだけでしょ、この国ではガルフ・ライクドと名乗らないほうが良いわよ? なぜなら豹変領主なんて呼ばれてるくらいですから、ガーフで良いでしょ」
「それで参加させてくれるならね」
「じゃあ、ガーフ・ライクド、今から10人のバトルコロシアムがあるから、それを勝ち残れば、次の試合に参加させてもらえるは、報酬はアーザー様との決闘を挑めるのよ? 勝てば9大魔王の称号を貰えるの、老後安定した年収を貰えるのよ!」
「はは、アーザーも面白い事するな」
「アーザー様を呼び捨て? 良い事アーザー様は人間王の方でね」
「分かってるさ、じゃあ行くとしますか」
ガルフは闘技場の入場口に入っていく。
きっとその後ろ姿を見て受付嬢は頑張れとでも思っているのだろう。
闘技場の広場に入ると。
どっと押し寄せる観客の叫び声。
次から次へと響き渡る多くの人達の声。
心臓が高鳴るのを少なからずガルフは感じている。
1人1人名乗りをあげていくが。ガルフはなんとなく。
「ガーフ・ライクドだ!」
と剣を抜き打ちざま名乗ってみるが。
観客からは笑い声ばかりが響いていた。
9人の厳めしい猛者達がやってくる。
「おーし」
ガルフは剣を構えて、取り合えず。
「おい、ガキ、お前から殺してやる」
「くひひ」
「そんな雑魚で良いのかな?」
なぜか9名がこちらに向かってくるわけで。
「ふん、面白い」
ガルフは剣を抜き打ちざま、9人の冒険者の首を両断していたわけで。
気づいたら首から鮮血を吹き上げて、1人また1人と倒れていく。
周りから見たらガルフが剣を抜いて鞘にしまう姿を見ている訳ではなかったので。
ガルフがただ歩いてるだけで周りの冒険者が死んだようにしか見えない。
「何をした、貴様」
審判が口をぽかんと開けて叫ぶと。
「ただ。斬り殺しただけだよ」
「見えなかったぞ、衛兵取り囲め!」
「うぉい、俺は普通に勝っただけだ。ばーか、殺されてーのか」
その時、1人の少年が闘技場の真ん中にジャンプしてやってきた。
衛兵達が頭を下げると。
「アーザー様」
「いやこの人ガルフ・ライクド様だから」
その場の衛兵達が口を開けて唖然としている。
受付嬢まで慌ててやってきて土下座している。
「申し訳ありません、ガルフ様だとはいざ知らず」
「いや、良いんだよ」
ガルフは剣を鞘にしまっていた。
「ところで、次のバトルの相手は?」
その場が沈黙に包まれる。
「ガルフ様、あなたと戦いたい人などおられません、なぜならあなたと戦えば死ぬからです」
「いやー俺としては色々と戦ってみたいんだけどねー」
「が、ガルフ様、どうか、アーザー様でご勘弁を」
「そ、そうですわ、アーザー様なら」
「僕は良いけどさ」
「お、やるかアーザーさん」
この時、闘技場にいる人々はこの時、心の底から歓声を上げていた。
あのアーザーとあのガルフが戦う。
すぐさま人々が歓声を上げて、次から次へと観客がやってくる。
「それでは退散しておきます」
受付嬢と審判が下がると。
この時誰もが2人の戦いを闘技場で収まるレベルだと誤認識していたのであった。




