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「……?」
まだ眠い、という思考で目が覚める。
そうして寒いという感覚で、体にぎゅと力を入れてかるく身体を丸めた。
久しぶりの肉体の機微が煩わしくも懐かしい。
布団はちゃんと身体を覆っているのに、寒さは遠ざからない。
自分の身体の前に熱源があるのを感じてそれを抱きしめると、その熱が触れた場所から身体が徐々に暖かくなり、ようやく浅い不快な眠りから解放される。
すぅ、と深く眠りについた俺は朝までぐっすりと眠った。
日差しの明るさで目が覚める。
この世界にも太陽のようなものがあるのか、それともあの頭上に浮かぶ不気味な城になにかカラクリがあるのかわからないが地球と同じ感覚で目覚めた。
そしてすぐにそれに気づいて眉をいからせた。
「理人テメェ!!!」
朝一から出した大声に、すやすやと眠っていた理人が起き上がりこぼしみたいに飛び起きた。
温かい温度になっていた布団を跳ね除け、中腰になるとキョロキョロと周りを見まわす。
「!? なに!? 敵!?」
大声から敵を連想するとは理人は思ったよりもこの世界に危機感を持っているらしい。
「テメェ……俺と同衾するとは! 昨日の話はなんだったんだ! 俺とお前は番じゃねぇって言ってんだろうが!」
すぐ近く、布団から離れがたくて足の先を布団の中に突っ込んだまま怒る俺の姿を見て理人は目を丸くした。
「え? オレはちゃんと自分の布団で寝てた……」
理人はぐちゃぐちゃになった自分の使っていた布団を見て、俺を見て、右側にあるもぬけのからと言った風情の布団を見た。
俺も理人の視線を追うようにして、本来なら自分が寝ているはずの布団を見た。
「………。あーーー、俺が間違えて潜り込んだのか……」
自分の体温で布団が暖まらなくて、寒い寒いと思いながら寝たことは覚えているが、そのあと温かい何かに寄り添ってやっと寝たんだったな。
あれは人間の身体だったのか!!
かつてない間抜けな沈黙が二人の間を包み込んだ。
「すまん……ハヤトチリだった」
「はぁ…まぁ……別にいいですけど……」
明らかな冤罪を着せられたのに理人は、ぼけっとしている。
怒ってはいないな。
「えっと、……あーすいません。一つだけ質問いいですか?」
理人は寝起きですぐに行動できるタイプだな。
布団をささっとたたんだところをみても家では布団を敷いて寝ていると見た。
今時ベッドではなく布団派なのは珍しい。
「質問? なんだ? 俺がわかることなら答えるぞ」