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砂と小石だらけの道に慣れていないためかなり歩きにくい。ただでさえ履き潰した靴の中に終始砂が入ってきていて足が痛いのに、やたらに強い風が向かい側からびゅうびゅう吹いている。
頭上にそびえる城は真っ白な壁で出来ており、子供に語られる御伽話のお城そのものといった風情だ。
霧に霞んでいるため、城の大きさ、規模も遠さもわからない。ドーム状になにかに囲われているように見える。幻想的ではあるが、重力という概念を無視した様相にはぞっとする。
強風に煽られながら歩き続けてようやく小さな集落に辿り着いた。
木の柵で数十件の家の周りを囲っているだけ、といったかなり原始的な町だ。
この辺には人間の脅威となるような生き物が出ないんだろう。どこかのんきそうな雰囲気がある。
町に住んでいる人に話を聞いてみると、この町は俺たちのように別の場所から連れて来られた人々が暮らしている町だそうだ。
別の場所、と言っても皆が皆日本人らしい。
今の流行から考えれば確実に時代錯誤な短ランぼんたんを見て、町番の古株だという高齢のおじさんが「懐かしい懐かしい」としきりに頷いている。
俺も生きていたらたぶんこのぐらいの年齢なんだろうと思うと不思議と親近感が湧いた。
同じ境遇のもの同士、いきなり放り出されたことに同情気味の村人たちに借りの家を借りて少しの間住むことになった。
木で作られた立派な家だった。
どうもそこは集会所の役割をしている建物らしかった。客様の布団もある。想像していたよりかなり待遇が良い。
野晒しで野宿することも覚悟していたので拍子抜けした。
一緒に来たのだから、当然楠木理人も同じ家に住む。
個別に家を借りたいなど言える雰囲気でもない。
同じ年頃に見えるため、友人だとでも思われている可能性が高い。
「おい」
「ハイッ!」
軽く呼びかけると、ぴょいっと居住いを正して俺の前に座る。黒々とした髪をはじめ、どこもかしこも砂だらけになってしまっている。ネクタイを緩めることもせずきっちりと制服を着たままだ。
「これからお前……理人と俺は一緒に住むことになっちまった」
「そうですねッ!」
返事が元気すぎて疲れる。
俺は右手でこめかみを抑えた。
「元気だな……」
俺は正直もう横になりたい。
いや、でも砂だらけだしせっかく風呂がついてるわけだし身綺麗にしてから布団に入りたい。
「そりゃ、番と一緒にいるんですから、テンション爆上がりですよ」
にこにことした邪気のない笑顔で俺を見てくる。
こいつまだそんな事を言っているのか。
心底呆れてしまう。
何が番だ……