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而鉄篇  作者: 伊平 爐中火
第2章(前編)荒天
78/139

―アルム近郊、マヌ村、ネメ―

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夕闇の時刻であるが厚い雲のせいか空には赤さは見えない。代わりに村の中央に焚かれた、井桁の火。周りには村の人々が集まり、わいわいと騒いでいる。領都の祭りと比べれば、楽器の数は少ないが、それでもその調べは流れていく。

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 今日は村の春祭りと…、コッコ姉ぇとテガ兄さんの婚儀の祝いずら。

 領主様んとこの春祭りが終わってしばらくしたら村の春祭り。仕出しも、盛り上がりも領主様んとこの方がすごいから、わざわざ村でもう一回する意味はあんまないと、あーしは思うんだけど…。皆が領主様んとこの春祭り行くわけじゃないし、父ちゃんも母ちゃんも楽しみにしているからなあ。

 でも、都会のお祭りはもっとすごいって言うし、あーしも一回は行ってみたいなあ。

 あーでも婚儀は春祭りと一緒にやるもんだしなあ。あーしもいつかは…。いや、もしお街の方のお祭りで婚儀上がられたら、それはどんだけいいことか。あぁ、それいいなあ。ジャコはちゃんと考えてくれているんだろうか。

 そう言えば、今日は未だジャコの姿を見てないずら。あん子、目ぇ離すと直ぐどっか行ってしもからなぁ。

 ここには村の皆が集まっているはず。あーしはきょろきょろと見回すが見つからない。

「ようよう、お嬢ちゃん一人?俺と一緒に一杯どう?」

 酒を持って、どっか知らないお兄さんが話しかけてきたずら。か、肩まで組んできたずら。

「い、えぇえ…。」

 こんな人、うちの村におったっけか?いや、いや、あーしにはジャコって許嫁が…。あ、いや、こん人どこかで…。

「ズブ兄ぃ…何してんずら…。」

「タキオぉ?」

 村の同年代の男子のタキオがやってきた。しかし…ズブってぇと…。

「おう、何だ。タキオ、おめぇ。そりゃ、野暮ってぇもんだぜ。」

 くいっと酒を呷るズブって人。

「あ、あぁ。ササン姉さんの…。」

「げ、姉ちゃん。ササン、知っているのかよ。」

「そらそうずら。精錬場にも来てたずら。」

 タキオが呆れ声で言う。精錬場…、ジャコが働いているとこずら。冬の間に何回か行ったけど、そこにいた人かあ。道理で見たことあるなって。ササン様って言ったら、あそこのまとめの女の人ずら。コッコ姉ぇの上にいるって言う。

「えぇ。そうだったかな。こんに可愛い娘ちゃんなら、俺も気付きそうなもんなんだからなあ。」

「全く、親方が炉周りに女を近づけなかった理由がわかるずら。おいら、今日はズブ兄ぃを見張るように、女将さんに言われとんずら。それに、ネメはジャコの許嫁ずら。あんま、あれなんは勘弁してくりょうし。」

「ちぇ、仕方ねぇなあ。」

 ズブ様とタキオは連れ立って去っていく。


 ああ、何か入ったけど、そうじゃね。

 ジャコを探さんとお。

 ああ、ほんにジャコはどこ行ったずら!

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