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而鉄篇  作者: 伊平 爐中火
第1章(後編)冬の仕事
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―アルム近郊、精錬場、コッコ―

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何やら騒がしいな、と農夫どもは顔を向けるも、ズブとササンの姿を認め各々仕事に戻り行く。赤い顔をしたテモイも、もう大分受け入れられて、もしくは当たり前の光景として。ひょうと冷たい風の吹く。どこかで、どさ、と雪の木から落ちる音がする。

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「んじゃまあ、行ってきますけぇ。」

 あーしは、ササン様、いやササン姉ぇに言われて走り出す。

 えっと、何をすればええんだっけか。確か、ズブ様が、えーとササン様が、ササン姉ぇなら、ズブ様はズブ兄ぃなんかな。でも、ズブ様とササン姉ぇは違うお人だかんなぁ。わかんねぇなぁ。あーしみたいな田舎モンには公都生まれの方々は皆、様、ってつけとかんといけねぇような気がするんだけんど。

 んでも、あーしの旦那様になるんテガさんはお二人と兄弟分だけぇ、あーしもそこに入れてもらえるんか。

 いやぁ、そんでもあーしが公都から来た都会のおん人と一緒になるなんて、まるで夢のようだぁなぁ。しかも、テガさんは都会のお人だけんども、あーしらみたいなのに合わせてくれる優しいお人だけぇ。村で売れ残ってたあーしを娶ってくれるだなんてぇ。あいや、あーしも幸せもんだけぇ。トルマの奴も羨ましがってたけぇ。

 いけねぇ、いけねぇ。ほうじゃね。ぐずぐずしとったら、ササン様、えーとササン姉ぇが、またカッカするけぇ。

 ケーシャじゃな。ケーシャが、テモイ様が足らんと。ほんで、アルオ様が持ってたと。ケーシャがなんだか、あーしにはわからんけんども、アルオ様んとこだったら、お父っつぁんがおったなぁ。

よし、お父ちゃんに聞こう。


「お父ちゃん。ササンの姉ぇが…」

「てぇ!おまん、ササン様に姉ぇだなんて。おまん…」

 お父ちゃんがびっくらこいたってぇ顔であーしを宥めようとする。ほうじゃねぇて。

「お父ちゃん、落ち着いてぇ。ササン姉ぇが、姉ぇとお呼びと。そう言うたけぇ。そんに、あーしもテガさんと一緒になる身だけぇ。テガさんと、ササン姉ぇが姉弟分なら、あーしも姉ぇと呼ばなきゃあ。」

 あーしはお父ちゃんに説く。

「ほぉかぁ。いや、あしも、いやぁ、ほうかぁ、ほんなら…」

「お父ちゃん、ほうじゃないけぇ!」

 なんじゃら、言い始めたお父ちゃんにあーしは気ぃを付ける。

「ケーシャが足りんてぇ、テモイ様がぁ、アルオ様でねぇかって、ほんでズブ様、ズブの兄ぃが、ササン姉ぇが、あーしに聞いてこいて。」

 お父ちゃん、しっかりしてくりょうし。

「あー、ん。コッコ、からかって何ぃ言ってんだかわかんねぇ。珪砂が、あんだって?」

 あぁ、あーしも気ぃ付けんと。


 あーしも、テガさんの嫁になるんだきに、しっかりしんとぉ。

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