―アルム近郊、精錬場、ササン―
-----------------------------------------------
精錬場の目抜き通りとでも言おうかという道。入口から見て右手では鉱石の選り分け。その一個奥には炭焼き小屋。さらに最奥には精錬炉のある広場。左手は幾つかの小屋が並び、それぞれ鍛冶小屋、煉瓦小屋など。避難小屋を兼ねての番小屋は、出納役の仕事場にもなっていた。その役目を担ってはいるササンだが、今は炭焼き小屋の前で新しく運ばれて来た木々の数を数えていた。
-----------------------------------------------
全く、最近はレンゾ兄ぃの、野郎の、ズブの扱いが雑過ぎる。
ズブは繊細なんだ。
何だか、レンゾの奴が連れてきた硝子職人とズブが揉めている。ふざけんな、これ以上ズブに負担かけんな。
って私が目で圧かけていると、ズブから声がかかった。
「おーい、ササン。カッカすんな。」
ズブがガタガタ抜かすから、睨め付けておく。私はカッカなどしていない。
そのまま、ズブは寄って来る。
「あーまあ、そうだな。お前は冷静だ。」
ズブは両手を上げて言う。
そうだ。私は冷静だ。
「そうだな。あー、俺らが何を話していたか。聞いていたか?」
まずい。聞き逃していたら、ズブがどうなるかわからない。だって…。
「わかった。ここはうるさいからな。聞き逃しても仕方ないな。」
そうだ。ここがうるさいのが悪い。さっきから、ガンガン、キンキン、ガーガー。誰だ。こんなうるさい音を立てているのは。
「うるさいついでに悪いが、少し珪砂の、あー珪砂がどうなったか、調べてくれないか。」
ズブは私に指示を出す。勝手に私を指示を出すな。私はズブと物資の管理で忙しいんだ。
そうだな。コッコがいい。最近は私の下働きをしてくれる人たちも付いた。
コッコはそのうちの一人だ。私らと一緒に、セブ兄ぃと一緒に来たテガの奥さん、未だ結婚はしていないから、確か婚約者とか言うのになるらしいけど、そのコッコに任せるのがいいと思った。
「コッコ!いる?」
「はいぃ、いますぅ。なんでぇしょうか、ササン様ぁ。」
何故か、ここの女どもの差配するのは私になった。だから、大体女どものうち一人二人はいつも私の近くにいる。今はコッコは鉱石の選別から一度帰ってきたところのようだ。手が真っ黒になっている。
「様はいらない。」
「そうはいいますんけども。」
「じゃあ、姉とでも付ければいい。」
「んじゃあ、ササン姉ぇ。」
そうか、私も姉とか言われる立場になったのか。
「ササンが姉貴分かぁ。コッコも苦労するなぁ。」
お前は勝手に喋るな。