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而鉄篇  作者: 伊平 爐中火
第1章(後編)冬の仕事
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―アルム近郊、精錬場、レンゾ―

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晴天の昼、しかも風も少ないとあれば戸は開け放たれたまま。しかし、外とは打って変わって小屋の中は暗い。ぱち、ぱち、と燃える炉の光が妙に明るく見える。ほう、ほう、と沸き花が舞う。火が明るいだけにむしろ他を黒く染めているようにも。

レンゾは一人、手押しの箱(ふいご)()る。傍らに立つ農家の子倅、ザッペンは黙って炉を見るレンゾを見ていることしか出来ない。肩に担ぐ槌こそ持つが指示があるまでは、ただ立っていることしか出来ないのだ。

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 何だったんだぁ、モルズ兄ぃは。あんな槍見せて。

 確かにあれは王都でも鳴らしてる工房の作だが、作った奴がなっちゃいないな。細ぇとこがなっちゃいねぇよ。ありゃあ、三下に持たせるもんだな。大体、娘が婚儀だ、何だって齢まで下働きってんだからな。大した腕じゃあねぇよ。

「親方ぁ、ちっと珪砂が足りねぇわ。アルオ奴も繋ぎに使いてぇってんだ。何とかならねぇか。」

 そう言えば、親方の作る槍の拵え…。

「親方ぁ、聞いているか。」

 何だか、うるせぇ奴がいるな。

「親方。親方。テモイの旦那ずら。」


「何でぇ!てめぇら!親方、親方、うるせぇなあ!」

「そらぁ親方が話を聞いてねぇから、言ってるんだろうが。」

よう見ると、硝子職人のテモイだ。煉瓦職人のアルオが何だって?うるせぇ奴だな。てめぇ、そうやってお前ぇただつったってんなら、てめぇなんざぁ、ただのデクノボーじゃねぇか。

「どこに親方がいるってんだ。てめぇ。」

「レンゾ、てめぇがここの親方じゃねぇのか。」

 何言ってんだこいつ。

「あぁん?親方だぁ?親方ってんなら、俺ならドンテンの親方、てめぇにはジーゲンの親方だろうが。」

 テモイは何言ってんだって顔をする。

「ここの差配は、レンゾ、てめぇの仕事だろ。じゃあ、てめぇが親方じゃねぇのかよ。」

「あぁん?まあ差配は、まあ、ううん?誰がやってんだ?」

 ここの差配やってんのは俺なのか?いや、でも、セブ兄ぃのような、いや実際、差配やってんのは、ササンのような。

「こりゃ、どうしようもねぇ親方のとこに来ちまったもんだ。」

 テモイがあきれた顔をする。

「あぁん?てめぇ文句あんのか!?」

「いや、文句はねぇけどよ。なんだかんだと、やりたいようにやらせてもらえているからよ。よぉわからん、貴族サマの言いたい放題聞くなんてのより、余程いいけどよ。」

 あー確かに硝子ってぇなるとお貴族サマの相手が多そうだな。そうだな。鍛冶のこと何もわかっちゃいねぇ、クソ貴族サマはここにはいねぇからよ。どうでぇ。セブ兄ぃはすげぇだろ。

「それはともかく、俺は珪砂が欲しいんだがよ。」

 テモイはてめぇの要求を推す。

「知らん。ササンに聞け。」

「いや、ササンは俺らが近づくと、何だ、露骨に逃げるからよ。」

 ササンはいつまで経っても、あんなんなんだな。

 てぇと、ズブだな。

「じゃあ、ズブだ。あいつなら、ササンに話を通せる。」

「そうかぁ、ズブだな。確かに、そんなら、そうだな。」

 テモイがズブの方を探しに行く。

 ったく。どいつも、こいつも、差配待ちやがって、てめぇで考えてやれってんだ。

ガラスの一番古い利用は打製石器、という話はさておき。

人工のガラスもまた古く紀元前数千年にも遡ります。

高級品であったという話もありますが、原料が地殻の主成分とも言える酸化ケイ素であるだけに、製法さえあれば作製すること自体は不可能では無かったのではないでしょうか。

ただし、純粋な酸化ケイ素をそのままガラスにしようとすると1200℃以上、場合によっては1700℃以上の高温が必要です。

そこで、ここに石灰やら何やら(大体、アルカリ塩・アルカリ土類塩系のもの)を入れると、凝固点降下が起こって上手いこと加工できるようになります。

水に塩や砂糖を入れると氷る温度が下がるやつが酸化ケイ素でも起こるわけです。


余談ですがガラスは実は液体という話もありますが実際的には諸説あるというのが正しいと思います。

物理学的にもそうそう簡単な問題ではありません。

「ガラスは液体か」という問いへの正しい答えはおそらく「わからない」もしくは「未だわかっていない」だと思います。

そもそも、ガラスと一言に言っても種類があるわけですからね。

液体であるガラスもあれば、固体であるガラスもあれば、液体かつ固体であるガラスや、液体でも固体でもないガラスもあるかもしれません。

この辺も考えると「ガラスは液体か」という問いへの答えは「それであることもあるかもしれないが、そうでないということもあるかもしれない」が正しいのかもしれません。

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