―史官、レンゾ・テニニを訪ねる。テニニ鉱山の長屋、その奥の一棟にて―
おう、ダンゾ、帰ったか
何?客人?
そうか、その若ぇ姉ちゃんか?
お前ぇもそろそろ身ぃ固める気になったか?
あぁん?違ぇ?
何?皇都から?
そら遠いとこから来なっしゃった!
アイシャッ!酒だ!この前タッソのとこからもらったのがあったろ、赤いやつだっ!
…
なに?飲まないだあ?それは妙ぉなことを申されるっ!あぁ?
…
なに?皇史編纂だあ?
ああ、何だ、アニキのことぁ書こうってんだな?
そんで一の弟分の俺のとこに来たってわけだ!
アニキと俺の出会いったぁ…
…
…
つまりアニキはそこまで姫殿下を男と思ってたわけだ…
…
…
そんでモルズ兄に任せてアニキは行ったんだ…
…
…
あん?違う?違いわないが違う?何言ってんだかわかんねぇな?
俺んこと書くだぁ?
なに?大公家八傑だぁ?列伝だぁ?
大公家っちゅうんはアニキんとこんだろ?
八傑って何だあ?
え?アニキの弟分、子分?
あん?テテニ鉱山開いた俺のこたぁ書く?
そんなこと言われたって自分の何を話せばよいかなんて俺ぁわかんねぇよ
何だ?聞くまで帰れねぇて…
…
勅命だあ?宮仕えもせちがれぇな!
アイシャッ!酒だ!この若いのに一献!
何?いらん?またまた妙なことを申されるっ!
…
…
あーなんだ、仕方ねぇな、アニキんためとなっちゃあ仕方ねぇ
よーし!アイシャッ!酒だ!あの一等赤いやつを…
…
…
…