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クラブ・シクラメン

13.クラブ・シクラメン


決算発表を無事終え同夜、畠山新社長と今川新専務が行きつけのクラブ・シクラメンに集まった。畠山から今川へ「決算発表後、今晩それぞれで祝いの夕食をしたあとシクラメンでおち合おう。」と事前の打ち合わせができていた。

シクラメンは名古屋財界の重鎮らが出入りする有名なクラブだ。別名、名古屋の夜の商工会議所と言われている高級クラブだ。ママは、北条雅子ほうじょう・まさこといい、この後すぐに、大物俳優の伊達政人だて・まさととの関係を週刊誌にスクープされる。更にはその後、伊達が逝去する直前に入籍して彼の多額な遺産を相続することになり、週刊誌で大いに騒がれることになる。このとき、伊達はまだまだ元気でお店に時々顔を出していた。雅子ママとの恋仲はこれから進展するのだ。

いつも店には白、紫、ピンクのシクラメンが咲いていた。常連のお客は名古屋電力はじめ、愛知鉄道会社、中部銀行、T自動車グループ企業の各社のトップといった中部財界のVIPばかりだ。雅子ママが足利製作所の新社長就任を知り、決算発表を前に足利本社へお祝いの胡蝶蘭を届けていた。これに対するお礼という意味もあり、畠山新社長が気を使って本日、シクラメンを今川専務との待ち合わせ場所にしたのだ。

今川専務がシクラメンに到着した時にはすでに畠山が来ていた。記者会見を無事に終え、ほっとしたことからか大変上機嫌で、諏訪ひろみ(すわ・ひろみ)と旭日美帆あさひ・みほの2人と話をしていた。足利本社に胡蝶蘭を届けたのもこの2人のホステスだ。畠山と今川がそろったところで、雅子ママが顔を出し、「畠山社長、今川専務本日はおめでとうございます。」「これはお店からのお祝いです。」といって美帆にシャンパンを開けさせて、皆で乾杯した。雅子ママが「お二人とも偉くなっても引き続きシクラメンを贔屓にお願いします。」といつものように微笑みながら社交儀礼を述べた。「もちろんですよ。こんなに可愛い子がおそろいだし。」と今川がひろみの手を触りながら、新社長を差し置いて答えた。ただ、今川の内心は、「同期の畠山に先を越された。負けられない。次の社長を狙いたい。錬金術で大儲けして会社に貢献して何れは畠山を抜きたい。そのためには創業家である足利会長のご機嫌をもっともっととらないといけない。いままでと違ったこともしていかないと。」という思いであった。若干焦りがあったが、畠山には悟られないようにと平静を装った。

丁度この時、時の人、伊達政人が入ってきた。名古屋でのトーク講演を終えて、芸能人仲間と夕食をとり、その後、雅子ママの顔を見に来たのだ。名古屋に来たからには雅子ママに会わずには帰れない。70代後半とも思えない、ダンディーな上下に身を包み、軽やかな足取りで一人で入ってきた。お忍びでママに会いに来たのだが、お店が一瞬のうちに華やいだ雰囲気に変わった。流石は有名男優だ。お店の常連客はママと伊達との関係をうすうす感じていて、邪魔に入ることはなかった。雅子ママが「ちょっと失礼します。」と畠山達の席から自然と立ち上がって、伊達の席へと移動しても誰にも止められなかった。

伊達は俳優座を出て新東邦に入社、若手映画スターとして活躍。俳優として50年以上活躍し、60本以上の映画に出演している。大河ドラマにも出演し、武田信玄や織田信長役も演じたことがある。特技は大学時代からの乗馬と相撲で大相撲名古屋場所のたびに名古屋へ来ていた。出身は仙台だがこうして名古屋にゆかりができたのだ。一度、結婚しているがその後、離婚し現在は独身だ。

こうして、各々のシクラメンでの夜は更けていった。


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