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09話 朝の怪談

「アリス。おはよう。」

朝の幻覚だろうか、それとも夢の続きだろうか。

「・・・目覚めたら引きこもりの美少年が朝日をバックに私の部屋にいる気がしますが気のせいですね?」

「気の所為じゃないよ。」

引きこもりの美少年(天才)、すなわちアルフィー兄様である。


身体は7歳、だが中身は100歳以上の婆。

さすがに10代のお若いのに着替えを見られるのはちょっと気が引ける。見た目に何ら問題は無いのだが、気持ちの問題だ。


そんなわけでベティに頼んでアルフィー兄様を部屋から追い出し、ワンピースドレスに着替えて再び迎え入れた。


「何があって私の部屋に?呼び出してくだされば私が出向きましたのに」


「一応アリスは病み上がりだからね。そんな傲慢なこと出来ないよ」


「兄様はお優しいですね。ライアス兄様達のようにドタドタ入って来て頂いても大丈夫ですよ、真夜中に。」


「・・・ライとマリアスだね?注意しとくよ・・・」


「是非ともよろしくお願いします」


聡いアルフィー兄様は私の言いたいことを察してくれた。ありがたい。


「して、何用でございましょうか?」


朝の紅茶を飲みながら首を傾げてみせる。どうだ可愛いだろ。


「アリスは本当に可愛いね。姉様にはない可憐さがあるから、大事にしなよ。」


ほれみろ。あの私の最上級の笑顔にピクリとも反応しなかったナントカ公爵家のバカ息子とは大違いだ。

向かいのソファからこっちに移って来て、優しく頭を撫でてくれる。ついでと言うばかりにぎゅっと抱き締めてもらえた。


あれこれって乙女ゲーの世界だっけ?


それよりもこの図、兄妹(美少年と美少女ロリ)がいちゃいちゃしてると見られる。


「・・・2次元で、見たかった・・・」


本音が漏れたのも仕方ないと思っていただきたい。


来世で画才を持ったなら、これを書こうと心に決めた。




「で、本題に戻るよ。」


「えぇどうぞ。」


アルフィー兄様の腕の中から解放されたあと、やっと本題に入ってもらえる。

ベティに席を外させたところを見ると、なにやら重大そうだ。たんたんと語り出す兄様の話に耳を傾けた。


「1ヶ月程前のことなんだけどね」


その夜、兄様は王城の天文台のデッキで仕事をしていたらしい。


何でも、王都の増設計画を次の日の会議で発表しようとしていたそうな。

護衛も見張りもつけず、王都の街並みを頭の中に投影してイメージをスケッチしていた。


そして、それは月の明るい晩だったらしい。


ちょうど王城の広場に、天文台の影が写っていたようだ。ふと広場を見下ろした兄様は、おかしなことに気づいた。

丸いはずの天文台の屋根に、なにか装飾がついているように見えたのだ。


「まるで、人型の彫像が屋根の上に乗っているような、ね。」


「今か初夏だからと言って、朝っぱらから怪談ってのもどうかと思いますが、兄様。」


「怪談じゃないから困ってるんだよ。僕が実際に会ったんだから、現実だ。」


うっすらと青ざめる兄様。多分兄妹でないと気づけなかっただろう。そういえば、アルフィー兄様の弱点は怖いものである。


この世界にも幽霊は存在するので、幽霊や精霊は大丈夫なのだろうが、例えばポルターガイストなど、人間が咄嗟に恐怖を感じる現象が苦手だったはず。

精霊が存在するので魔物も存在し、その中の1グループとしてポルターガイスト等もあるのだが。



ちなみにこの世界では、ポルターガイストは専門職が祓うより、逆にポルターガイストがいるであろう場所に物を投げつけるのが効果的らしい。


なんという力技。



「ですが、なぜ私のところに?他にも、例えば他の兄様や姉様がいたのでは?」



よりにもよってなぜか弱い王家末娘(7)を指名したのか気になる。それを指摘すると、苦笑いして答えてくれた。


「アリス、3つ子を誘ったらどうなる?」


「ライアス兄様が騒ぎ立ててレイアス兄様はパニックになりマリアス兄様は寝ますね」


なるほど、役に立たない。


「では、双子を誘うと?」


「口と凶器で正体不明の奴を殺しかねません」


「だから、比較的まともなアリスの所に来たんだよ」


双子というのは、上から3番目の兄様と4番目の姉様の事だ。それぞれ毒と棘を持つ。この2人のことは後々説明するとしよう。


「僕はあれの正体を知りたくてね。」


なるほど、それなら個性豊かな兄様姉様方は役に立たない。

正体を知る前に殺すか騒がしくなるだけである。


アルフィー兄様の頼みは断れないし、他の兄妹が役立たずとなれば私が出るしかなかろう。もしや1番の苦労人はアルフィー兄様かもしれない。


「分かりました。協力しましょう」



ぱあっと輝く笑顔を見て、天才といえど冷たい奴だけではなく、色んな人がいるのだなと思い知った。


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