06話 3つ子の兄様
タタタタタタタタタタ
ザザッ!
ドンドン!
ガラガラッ!
以上、ライアス兄様がここに来るまで、医務室から聞こえた効果音である。
「アリス!大丈夫か!?」
「ライアス兄様、廊下は走っちゃいけません」
少し息が乱れており、走ってきたのは明白。ちなみに私がこれをやると息が乱れるどころか息が切れるを通り越して息が出来なくなります。
「俺の担任みたいなこと言うなよー、あいつ口うるさいんだぜ」
栗色の巻き毛に可愛らしく整った顔立ち、いたずらっ子のような表情、素晴らしいショt・・・見るからにヤンチャな子供だ。
サスペンダーで緑の短パンを留めており、なぜかシャツはくちゃっとなっている。
・・・あのシャツ、毎日メイドさんが頑張って洗濯してアイロンかけてるんだけどなー・・・
メイドさんの苦労を思って遠い目をしていれば、さっきよりもだいぶ控えめな足音とノックがした。
「ライアス!ごめんねアリス、騒がしくって」
同じ格好のレイアス兄様が慌てて入ってくる。
「ライ、走らないでよ!また僕も叱られるじゃないか!」
また同じことを言われるライアス兄様。
この二人は母と子に見える。
当の二人はそんなこと思ってもいないだろうが。殆どの王家にとって、お小言を言うのは母の役目ではなくメイドか乳母、また礼儀の先生だけである。
ライアス兄様がヤンチャ枠に入るのならレイアス兄様は苦労人枠だろうか。マリアス兄様は不思議ちゃん枠だろう。
「ベティもなにか言ってください!兄のライアスがこんなのじゃ、アリスが可哀想です!」
聞く耳を持たないライアス兄様に苦労しているレイアス兄様がベティに助けを求めている。
なるほど。まさにこれが馬の耳に念仏。
困っているベティに私は助け舟を出した。
「大丈夫ですよ、レイアス兄様。ちゃんとライアス兄様も私の勉強になっていますから」
ことわざの意味の勉強とか。
「・・・なんか含んでないか?」
怪しむライアス兄様の視線を避けて窓の外を見ると、校庭の向こうの隅になにか見覚えのある顔が。それからその周りには上級生と思われる方々の姿が。
「・・・レイアス兄様、あれってもしやマリアス兄様では?」
「・・・マリアスだね・・・」
またか、と心底疲弊したようにレイアス兄様が呟く。主に同い年の兄弟2人のせいで苦労性だ。後で労わってあげよう。
「ちょっと助けに行ってやるか!よしレイアス、行くぞ!」
「分かってるよ・・・アリス、ここで待ってて・・・」
居ない!?と背後の医務室から悲鳴が聞こえた気がするが多分空耳だろう。
「よろしいのですが、アリス様?」
私と共に小走りで校庭へ向かうベティが聞いてくる。
「いいんですよ、たまにはレイアス兄様を休ませてあげたって罰は当たりませんしね。」
ぱちんと綺麗に片目をつぶり、あ、今ちょっと私かっこよかったなとか思いながら、さっさとマリアス兄様を助けに行くことにした。