04話 母様
「アリスちゃん、回復が早いわね。先生はなんて?」
母様が乳母のベティに聞く。
「お医者様は、もう毒は抜けきった為、アリス様は大丈夫、と。」
今は夏だが、ガーデンは室内のものが選ばれており、暑すぎることは無い。だが暖かい事には暖かく、意識がふわふわと無限の彼方へさあ行くぞ!と飛び出していくのも無理はないわけで。
ジュースに刺さったストローを食みながら、私は会話をぼんやりと聞いていた。
母様。
私の、アリスの記憶に残っているものでも十分綺麗だった。が、実物はまた違う。だいぶ違う。
美魔女。
20の時に第1子を、で、その最年長の姉が今27なので、足して47歳。
もう一度言う。
美魔女だ。
父様が世界中の武術大会で優勝してまで欲しかったのが分かる。
今日は王立農園のガーデンに呼び出しを食らった。
何をやらかしたのだろうかとびくびくした。あ、例の暴言の件だろうかとか考えた。
それならもうやらない。今の人生を終えた時に半殺しにするから、今は我慢だ。
だが、本当は私が毒で高熱を出し死にかけたあとの回復度を確かめたかったらしい。
眼差しは優しい母そのものである。
完璧に計算し尽くされているのであろう、美しい花々が咲き乱れるガーデンの中で私だけが浮いている気がする。
母様も母様の侍女もこれでもかと美人。
この国では十になるまで侍女が付けられないため、代わりの乳母、ベティもこれまた美人。
いや、多分私も充分美少女なのだ、今世では。
ただ、今世より前世の方が過ごした時間が長いため、浮いている気するだけだろう。
「ところでアリスちゃん、今度、3つ子ちゃんの学校を見学してみないかしら。」
ふっと現実に戻され、いきなり会話を振られたことに慌てて答える。
「学校、ですか?ライアス兄様達の?」
「えぇ、多分アリスちゃんも入ることになるからよ。私と一緒に。」
3つ子とは、ライアス兄様、レイラス兄様、マリアス兄様の事だ。
上から数えて10番目の兄様で、つまり私の一つ前に産まれている。
彼らはギフトに魔法関係のものを貰っており、王立学院の魔術コースに通っている。
各11歳。
そう。
ショタだ。
その学校に行く、ということは、そんな感じのショタがいっぱいってことか。
「行きます」
即答した。ここまで約0.3秒である。