02話 王家末娘 アリス(7)
駆け寄ってきてくれたメイドさんは、私の暴言か私が狂ったとでも思ったのか、ふらりと気を失ってしまった。
ごめん、メイドさん。
恨むなら女神を恨め。
そう、私は転生したのだ。
何を隠そう、これで転生4回目、人生としては5回目である。
天界で女神から色々説明を受けたため、だいたいの状況は掴めた。
今、私がいる世界は、地球ではなく「シフバティット」。
剣と魔法とその他諸々、そのまま異世界と言っていい世界だ。
記憶を取り戻すのに時間はかかったのだが、私はこの世界で、
ラ ゼ ラ イ ン ド 王 家 末 娘 の ア リ ス 王 女(7)
として生を受けたようである。
1度目に死んだ時、転生女神に会った。
で、言われてしまったのだ。
「あのぉ〜、君の魂ってぇ〜、いわゆる〜、突然変異ってやつでぇ、新しい生に向かう時ぃ、記憶がそのまま魂にへばりついちゃうんですよねぇ〜。」
そしてオススメされたのが異世界転生。
が、私はこれを全力で断った。
何しろ、この時は、異世界転生にトラウマがあったのだ。いや、トラウマしか無かった。
まぁ、その話は後回しで、もう一つ重大な理由があったことは否めない。
異世界には、SNSが、ない。
ちょっと暴露するが、重度の2次元好き、ショタだとなお良しのその頃の私には、SNSがなければ生きていけなかった。
異世界には性癖を抉る良質な絵師が居ない。居てもそれを見るネット環境が揃っていない場所など、私は行くはずもないのだ。
高校の部活合宿でネット環境がないと知るや否や即刻退部した奴を舐めるなよ。
そして現代への転生、ネット依存を克服し異世界転生を繰り返したのだが、その異世界、つまり2回目の転生で私は酷い目にあったのだ。
下手に貴族の子女に産まれてしまい、底辺貴族に嫁がされそうになるわ王子に見初められて王家に入る羽目になるわ、そしたら妬み恨みで呪われるわ、暗殺者が来て夜しか眠れんわ。
で、最後には姑に殺された。三十路過ぎで。
今思い返しても思う。
こんな散々な人生あるか・・・?
これに懲りた私は女神を殴り、現代へと転生するように仕向けた。これが3回目の転生。
が、今度はトラック。四十路半ばで跳ねられ、転生女神の元へと舞い戻ったのだ。
勿論殴った。
「べべべ別にぃっ!私はぁ知りませぇん!運命の女神と共謀とかぁ、してないこともないですけどぉ!」
殴った。
殴りましたとも。
殴るついでにお願いした。
『今度は上流階級には産まれさせないでくださいねぇ?』
なのに。なのに。
「・・・王家末娘だと?」
殺気を出しながらぶつぶつ呟く王女をふわふわ銀髪美少年が心配そうに見る。ご丁寧に倒れたメイドさんも抱えているが、そんなこと気にしてはいられない。
王家だと?上流階級中の上流階級だぞ超上流階級だぞ?
・・・むむっ。
・・・超上流階級だと?
「屁理屈言いやがってあのくそ女がぁぁあ!!」
完全な予想だが。
「超上流階級なら上流階級には含まれない、だって「超」がついてるし。」
そう思ったのではなかろうか。
上流階級には産まれてないからOKとでも思ったのかあいつは。
○ねばいいのに。
ちなみに、意識を浮上しかけていたメイドさんは「くそ女」のくだりでまたふらっと来たようである。
ごめんなさい。