序話 目覚め。
ふりふりのレース。
ピンクのカーテン。
さらさら✕100ぐらいの寝具は、多分絹だ。ぼんやりとした寝起きの意識の中、認識できたのはそれくらい。
だが、だんだん意識がはっきりするにつれて状況が呑み込めてくる。
一、どうやらめちゃくちゃ豪勢なベットで寝ていること。
二、何やらざわざわとカーテンの向こうが騒がしいこと。
こういう時は二度寝に限る。二度寝に限るのだが、それは通常時の話であって、今は通常時ではないと本能が告げている。
とりあえずカーテンを開けよう。少々向こう見ずかもしれないが、とりあえずこの状況を打開する術のひとつではあるだろう。
どうやら天蓋から垂れ下がるカーテンの向こうでは、誰かが揉み合いをしているらしい。
「おやめ下さい、ルイ様。ごきげんようアルフィー様。どうぞ中へ」
「おい!!なんでアルはいいんだよ!」
「女王陛下の御命令でございます。お部屋にお戻りになられてください。」
冷静な女性の声と、苛ついた男性の声。どうやら苛々している人は部屋へ返されるらしく、アルフィー、と呼ばれた人は入る許可があるらしい。
てか女の人言ったな。
「女王陛下の御命令」って。
つまり、ここはどこかの王家に関係する場...?
カーテンを開けようとした手が、途中で止まる。
ぼやーっと記憶が戻ってきて、この世界での自分が思い出されていく。
記憶が戻っていくにつれ、私の中に圧倒的なもやもや・・・つか苛立ちが立ち込める。
中途半端に伸ばした手を怒りで握り潰していると、やがて、外からカーテンが開いた。
「あれ、アリス起きてたの?おはよう。」
隙間から覗いたのは、ほぼ白髪に近い銀髪の美少年。
そいつを見た途端、私は全て思い出した。バタバタとその銀髪少年の声に、メイド服の女性が寄ってくる。
「お起きになられてたのですか!」
で、その人は言った。今の私に1番言っちゃいけないことを。
「アリス王女様!」
ぶちん、と糸が切れた。
「あのくっっっそ女神がぁぁぁぁあ!!!!!」