Mine
部屋はLEDの熱を感じない純白な光に照らされている。
部屋には深い緑色の絨毯が敷き詰めてあり、中央に置いてあるガラスの机の上には、蜂蜜がかかった齧りかけの林檎と、光を柔らかく反射しているステンレスの灰皿がある。
灰皿には口紅がついた煙草の吸い殻が数本入っている。ソファの上では、ミネが赤色の下着を着けて寝ている。ミネは起きる気配がない。
ぼくはミネを起こさないようにゆっくりソファに腰掛けた。
ヘッドフォンが足元に転がっていて、ピアノの旋律がここまで届いた。
音楽を聴いているといつの間にか寝てしまったようだ。
ジャージの上着をそっとミネに被せ、寝顔をじっとみた。
ミネはとっても綺麗な人。
髪は美しい黒色で艶があり、ぼくと同じように肩にかからない程度に短く切っている。
そっと閉じられた瞼の奥にはとても大きくて鈴を貼ったような目が隠れている。
わざとらしいマスカラをつけなくてもまつげは十分に長い。
眉は細くて濃く、鼻も高い。
無表情の時はまるで日本人形のような凛とした雰囲気があるのだが、笑う時はまるで可愛い小動物のようにクシャッと笑う。
頬にはぼくと同じようなアザがある。
ぼくは、ミネのアザと自分のアザを同時に指先で撫でた。ミ
ネは目を覚まし、少しだけ顔を上げてその大きな目で僕の方を見た。
「おかえり、かわいいアスカちゃん。今日のライブどうだったの?」
「満員だよ。声の調子も良かったし。」
ぼくは、ミネのアザを撫で続ける。
絨毯の上に、写真が何枚も落ちている。
黒い箱の中で赤い受話器を持って三角座りをする痩せた白人の写真、光が射す水の中で裸で抱き合っている坊主の黒人と青髪のアジア系の女の写真、衣服を着ていない男の形をした白いマネキンの目を舐めているボロボロの服を着た女の写真、棺桶を催したガラスのケースの中に大量のサザンカと共に入れらて目を見開いている金髪の美形の男。
全部ミネが撮った写真だとすぐにわかる。
「いいでしょ、その写真。」
「うん。やっぱぼく、ミネが撮った写真好き。」
「その青髪の女さあ、大変だったの。撮影の前になって水が怖いって言い出してさ。」
「ぼくも水怖いよ。泳げないし。」
「でもこれ沈むだけよ。このイカつい黒人に掴まってさ。真っ裸でプールサイドぐるぐる回って、ヒステリー一歩手前までいっちゃってさ。ウザかったけど、ちょっと興奮しちゃった。」
「それでよくこんな写真撮れたね。」
「その黒人がナイスガイだったのよ。ねえ、水ちょうだい。」
ぼくはカバンからクリスタルカイザーを取り出し、ミネに渡した。
ミネは寝そべったままそれを飲んだ。唇は濡れた部分だけ艶々している。
「またアスカちゃんが歌ってるとこの写真撮りに行きたいな。あ、フルーツと皿、片付けなきゃ。」
「もう遅いしそのまま寝ていいよ。ぼくが片付けとくから。でもソファだと風邪引いちゃうからちゃんとベッドで寝なよ。」
ミネは少し起き上がり、少しぼんやりとした後、甘えたような声で言う。
「動くのがめんどくさいなあ。でも、アスカが一緒に寝てくれるならベッドで寝る。」
ミネはソファから立ち上がって、ぼくに抱きつき、首筋を舌で少し舐めた。
「今日はもう遅いからやめようよ、ミネ、明日って早いんでしょ?」
ミネは、はやいよ、と言って、口の中に舌を差し込んできた。
ミネの舌がぼくの歯の裏を舐める。
仕方ないと思い、それに応えるように自分の舌をミネの舌に絡めた。
蜂蜜のほんのりとした甘さを感じる。
下半身から尿意に似た熱い塊のようなものが湧き上がってくる。
ミネの手が股間に触れる。
ぼくがビクッと体を揺らすと、ミネは体を離した。
「その通り、明日は朝から撮影。そうね、もう寝よっか。」
そう言ってミネはベッドに向かった。ぼくはへたりとソファに座り込んだ。
ミネがこっちを見ながらクスクス笑っている。
「おやすみ、かわいいアスカちゃん。」




