表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代ダンジョン探報~30代無職が冒険者になりました~  作者: 洋紅色
【1章】 初めてのダンジョン探索
5/45

【1章】2 防寒具は大切ですよ?

友人からのメールで活力を得て、ダンジョンの入り口付近まで歩を進める。


ダンジョンの入り口に付近は土がえぐれていたり、小さな穴が開いている箇所がたくさんある。



これまでの道程は歩きにくかった。

しかし、普段歩きなれているアスファルトの道と比べてという対比上の話である。


アスファルトに慣れている現代人には、昔からの砂地の道は歩きにくく感じてしまうだけだ。


そして、その砂地には弾痕はなかった。

つまり、陸自が入口付近でモンスターの進行を防いでいる事を物語っている。



なぜこの事がニュース等で持ち上げられていないのか疑問でしかない。

自衛隊の皆さんは毎日神経をすり減らしているんだから、精神的な負荷を和らげる対策を取る必要があると思う。




入口付近にの周囲を調べているとダンジョンから肌を刺すような冷気が流れてくる。


ダンジョン内部には日光が当たらないからか、かなり冷たい風が流れてきている。

恐らくダンジョン内部は、この冷気と同じ気温なのだろう。



季節は初秋、まだ薄手の長袖を着こなすような時期である。

西原さんから渡された書類に書いてあったように、動きやすい服 (外出用ジャージ)を着てきた俺には厳しい冷気だった。



もし、今が夏だったら『暑い夏場の絶好の避暑地! 行こうダンジョン探索!!』みたいなPRで人呼べたんじゃないか?


いや、ないな……

いくら夏が熱くても、避暑地として南極を選ぶような人物はまずいないだろう。


どうやら、これからダンジョンに踏み込むという事で、恐怖がまた強くなってきて頭が現実逃避に向かっているようだ。




思考を切り替える為に、軽く頭を振って周囲を見渡す。


改めて招集者全員の服装を意識すると、秋物のカジュアルファッションが多い。

皆、ダンジョンからの冷気を感じたようで手をすり合わせたりしている。


見た目は20代ばかりなので、最近のファッションの流行を意識した服装に思える。

俺のようにスポーツをするような恰好をしているのが、他にいないのは何でだろ……


外見を気にする年ごろなのは分かるが、命がかかわるような場で動きやすさよりもファッションを気にするのはおかしいと思う。


これも、ジェネレーションギャップなのだろうか。

陸自も含めて俺が一番年上っぽいんだよなぁ……




そういえばお互いの自己紹介をしてないから、チャラ男 (仮)以外の名前って知らないな。

と思ったけれど、今回だけの付き合いなら覚えるのが面倒だと思い直した。


むしろ、万が一の時の事を考えると名前を知っていると身近に感じてしまうので、知らない方がいいのかもしれない。

チャラ男 (仮)だけは名前を知ってしまったので、手遅れだけど……



自衛隊はダンジョン内から流れてくる冷気が分かっていたのか、崎村1曹に随行していた隊員 (名前忘れた)が上着と手袋を配っている。



「今の気温に対して、上着と手袋を装着した方がいいかを各自で判断して下さい。 防寒具が不要な方は近くの隊員に返してください。

…………それと、そこのスーツの方は靴のサイズを教えて下さい」


最後のはチャラ男 (仮)に関してだ。

チャラ男 (仮)に関しては着崩したスーツに革靴という、ダンジョン探索とは程遠い恰好だった。


行動に問題なさそうだったらスルーするつもりだったのだろうけど、さっきから何度も滑ったりしているので、見るに見かねたと思う。



軍靴ってどんな感じの履き心地なのか、興味あるのでちょっと羨ましい。

けれども、咄嗟の時を考えれば履きなれた靴の方がいいと思うので、我慢する。




支給された上着と手袋を装備して、ダンジョンから流れてくる冷気に触れてみる。

寒さを感じなくなったわけではないけれども、行動する事で体温が上昇する事を考えれば、行動中はちょうどいい温度になるだろう。


ジャージ単体よりもゴワつくので動きが制限される感じは否めないけれども、寒さで体が縮こまるよりも断然マシだ。




「防寒具を返還する人いますか?」


全員が確認を終えたあたりで隊員が声をかけてくる。

皆さっきまで手をこすり合わせていたので、さすがに服を返すような人はいなかった。


誰も反応しなさそうなので俺は手を挙げて隊員の注意を引くと、気になった事を聞いてみる



「目出し帽はないですか?」

「「「「「「「「「「アンタは強盗にでも行く気か!?」」」」」」」」」」


今日初めて全員が声を合わせた瞬間だった。


目出し帽は漫画等の強盗がよく顔に装着しているアレである。

目と口だけしか外部にさらさないので、冷気の顔への影響も緩和できると思ったのだ。


皆、顔寒くないの?


近くに銀行とかコンビニないんだから、目出し帽被っても問題ないと思うんだが。




ファッションといい、外見気にしすぎでしょ。


ちなみに目出し帽は用意してないそうで、渡されなかった。

上着を用意できたなら、顔への影響にも配慮して欲しかったところだ。




…………ダンジョン主 (がもしいたら)からしたら、俺たちは強盗みたいなものだから目出し帽って正装じゃないか?




冒険者への第一歩とか

ダンジョンへの突入とか

漫画や小説ではもっとワクワクしてるものなんだろうけど


やはり現実は異なる。

ダンジョン前に来て、大分覚悟はできたとはいえ恐怖感は消えない。



そして、得るものなど何もない。

ほぼ確定しているイベントはモンスターとの巡り合い。


命をベットして何も得られない?

もう割に合わないという言葉じゃ軽すぎるよね……


せめて、ワクワクする要素を誰か下さい……



ぇ? しゃぶしゃぶがある?

アレは生き抜く為の原動力であって、ワクワク要素じゃない!




俺はモヤモヤした気持ちを抱えながら、冷気を放つダンジョンへ足を踏み入れる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ