幼馴染み視点2
前回に続き幼馴染み視点です。
おかしいと思った箇所、気になる箇所がある場合は教えてもらえるとありがたいです。
久しぶりに見た玲翔は、昔よりもだいぶ大人びて見えた。でも、さらさらな黒髪や整った顔立ちには昔の面影があった。
隣にいるのは友達だろうか?仲が良さそうだ。私ももう一度、あんなふうにしゃべる事ができるのだろうか?
先生が教室に入ってきて、自己紹介が始まった。玲翔に順番が回ってきて自己紹介を始める。玲翔はどうやらバスケ部に入るかもしれないらしい。もし玲翔がバスケ部に入るなら、私がマネージャーをやろうかな。
自分がマネージャーをやって、玲翔にタオルや飲み物を渡す姿を想像していたら、玲翔の隣に座る男子生徒の順番になった。さっき玲翔と一緒にいた人だ。
その人の自己紹介によると、玲翔とは親友らしい。何故か少し悔しかった。幼馴染みと親友はどちらが上なのか、なんて事を考えていた。
私の順番になり、自己紹介を終え椅子に座って後ろを向く。そしたら玲翔と目があった。その時の私は、自分の頬が熱くなっていくのが恥ずかしくてつい玲翔を睨み付けてしまった。
私はものすごく反省した。私の悪い癖だ。恥ずかしくなったりすると、つい目付きが悪くなってしまう。ダメだ、玲翔と目があうだけで頬が熱くなってしまう。こんなんじゃ、謝る事もできない。
私は友達の椿さんと陽菜さんに頼み、玲翔としゃべる機会を作ってもらった。でも、いざ話すとなると何故だか言葉がでてこなかった。私は絞り出すように、久しぶりと言った。
玲翔も私と同じ気持ちなのだろうか。返事をする前に変な間があった。玲翔は久しぶりと言ってくれた。返事が返ってくるのが嬉しかった。でも、次の言葉に私は玲翔との距離を感じた。
玲翔は水瀬さんと私の事を呼んだ。水瀬さん?その呼び方に酷く不快感を覚えた。そしてつい、また玲翔を睨み付けてしまった。
昔は麗奈と呼んでくれていた。それが当たり前だった。でも今、彼は水瀬さんと私を呼ぶ。そこで改めて、この3年半の空白の大きさを知った。少し、いやだいぶ甘くみていた。
またすぐに昔みたいに戻れると、そう思って疑わなかった。でも実際、玲翔は私のことを初対面の人のように呼ぶ。今日会ったばかりのクラスメイトと同じように私を呼ぶ。もう彼は私の事を幼馴染みとも思っていないのかもしれない。会ったばかりのクラスメイトと、同じように見られているのかもしれない。
そう思うと、言葉がでてこなかった。なにも言えなかった。彼に拒絶されるのが怖かった。
――ダメ、ちゃんと謝らなきゃ。
そう思っても、私の口から言葉はでてこなかった。そんな私を見てか、陽菜さんが親交会をしようと言ってくれた。まだ、チャンスはある。気持ちを切り替えてカラオケに向かった。
私はこういう、大人数の集まりはあまり好きじゃない。玲翔の方を見ると、パフェを食べる事だけに集中していて、食べ終わるとつまらなそうにボーっとしていた。玲翔もこういう集まりが苦手なのだろうか?甘党なのは相変わらずだった。昔と変わらないそんな様子に少しだけ嬉しくなった。
私が玲翔を見ていると、玲翔が私の方を見てきた。また目があう。そして、また睨んでしまった。私は自分にバカと言った。
私は気づけば玲翔を見ていた。また目があってしまうかもしれないのに、つい目で追ってしまう。玲翔はいかにも陽キャな女子生徒に話かけられていた。
そして、その女子生徒が玲翔に対して色目をつかった。久しぶりに、ものすごくイラッときた。
隣に座っていた親友さんが、その女子生徒を引き剥がしてくれた。ナイス!
いつ話かけようか悩んでいると、玲翔がスマホを取り出した。そしていきなり、帰ると言い出した。
クラスメイト達も困惑していた。玲翔はだいぶ急いでいる様子だった。なにも話せないまま、玲翔は帰ってしまった。隣の二人から何やってるの、と言われた。本当にそうだ。拒絶されると怯えてたら、何も変わらない。
私はその後、色々作戦を考え、シミュレーションをおこなっていた。そのためカラオケで何も歌わずに帰宅することになった。
入学式から二週間が経ってしまった。その期間、私が何をやっていたのかというと、玲翔を睨み付けているだけだった。
私も自分がここまでダメな女だとは思わなかった。この二週間の行動に後悔しながら、私は椿さんと陽菜さんとお弁当を食べていた。そうしたら急に顔も知らない男子生徒が教室に入ってきて「月城 玲翔って奴の席はどこだ!?」と大きい声で、近くにいた生徒に聞いていた。
私は玲翔の名前を出されて嫌な予感がした。玲翔は昔から、面倒な事に巻き込まれる人だった。また玲翔が傷ついてしまうのではないか?そう思った。
その嫌な予感が当たってしまった。その男子生徒は玲翔の机から教科書やノートを出し、床にばらまいた。カバンも床に放り投げられた。靴を机の上乗せて玲翔の席で悪態を取る男子生徒。
私は注意しようと思った。止めさせようと思った。でも、足が動かなかった。声も出せなかった。
そこに玲翔が戻ってきた。玲翔は表情一つ変えなかった。ただ、いつもより声が冷たくて、目が怖かった気がした。
玲翔は殴り掛かってきた相手にも全く動じずに、逆に転ばせていた。そして荷物をまとめ、そのまま帰ってしまった。最後に目があった気がした。
その後の授業には、全く集中できなかった。他の皆も同じようだった。どこかいつもと違う、よそよそしい空気だった。
それもそうだ。あんな事をされても何も動じないのは異常だ。殴り掛かってきた相手を簡単に返り討ちにした時は、クラスが凍りついた。椿さんも陽菜さんも驚いたような、怖いものでも見るような目をしていた。
そして、玲翔の親友だという舞阪君が普段からは想像もつかないほどに怒ったのも原因だろう。
私は自分が情けなかった。自分の臆病さに呆れていた。次は助けられるように、そう思ってこれまで過ごしてきたのに。何もできなかった。これでまた玲翔が傷ついてしまったら、死のうと思ってしまったら、そう考えると、私は何の気力もでなかった。
私はダメな人間だ。過去のトラウマを引きずって、また大切な人を助けられなかった。私のトラウマなんて、玲翔に比べたらものすごく小さい事なのに。
もうチャンスは無いんじゃないか。もう手遅れなんじゃないか。そう思ってた。でも、すぐにまたチャンスが到来した。騒ぎのあった週の金曜日、玲翔にこう言われたのだ。
――水瀬さん、今日一緒に帰らない?
次話で幼馴染みと主人公の関係が大きく変わります。
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