いざこざと幼馴染み視点
後半から幼馴染み視点です。
おかしいと思った箇所、気になる箇所があった場合は、教えてもらえるとありがたいです。
俺の目の前に差し出されたスマホの画面には、俺と杏奈さんが二人で歩いている写真があった。でも、これがばれたからといって、なんで俺がこんな嫌がらせを受けなきゃいけないんだ?
「これはお前と白波先輩だろ!?」
「その写真は確かに俺と杏奈さんだけど、それが?」
「杏奈さん!?テメェ!なんでお前と白波先輩が休日に一緒に出掛けてるのか、聞いてるんだ」
休日に一緒に出掛けてはいけないのだろうか?大体それの写真は盗撮ではないか?訴えれば勝てるだろうか?
「なんでって、呼び出されたからだよ。それとその写真はなに?」
「あ?この写真は知り合いが撮ったんだよ。それを教えてもらった」
「そう。で、俺はなんでこんな嫌がらせを受けなきゃならないわけ?」
「ハッ、そりゃあお前が白波先輩と二人で出掛けてるからだよ」
意味が分からない。誰かと出掛けてることが悪いのだろうか?杏奈さんと出掛けるのに許可がいるのだろうか?
「なんで杏奈さんと出掛けたら嫌がらせを受けるんだ?と聞いてるんだが」
「それはお前が白波先輩に近づいたからだ」
「はぁ、理由になってないんだが。……もしかして、あんたが杏奈さんの事を好きだから怒ってるの?」
それくらいしか理由が思い浮かばない。
「あぁ、そうだ。俺は白波先輩が好きなんだ。だからわざわざ同じ高校に入ったんだ」
やっぱりそうか。ここに入るために勉強したんだろうな。それにしても、杏奈さんは追っかけて来る人がいるほどの人気らしい。
「あんたが杏奈さんを好きなのは分かったけど、それが嫌がらせをしていい理由にはならないだろ」
「あぁ!?うるせぇよ。ちょっと顔がいいくらいで調子に乗るなよ!」
別に調子に乗ってない。それにしてもこの人は頭に血がのぼって、なに言っても聞かないな。よくこの高校に入学できたもんだ。
「別に俺が杏奈さんと出掛けても、問題はないだろ。今すぐそこをどいてほしいんだけど」
「あんま舐めんなよ!」
俺は、そう言って殴りかかってきた金髪の足を払い胸を押すと、金髪ヤンキーは床にしりもちをついた。
恥ずかしさからか、怒りからか顔を真っ赤にして俺を睨み付けてくる。俺はそれを無視して床にちらばった教科書やノートを拾う。
「さすがに、殴るのはどうかと思うよ。あんたのわがままに付き合ってる暇はないから」
「――ッ」
周りを見渡しても誰もがただ遠巻きに、巻き込まれないように静かに成り行きを見ているだけだった。何回目だろうか?こんな目に会うのは。俺は拾った教科書やノートをカバンにいれる。そのカバンを肩にかける。
「知らなかったんだろうけど、俺と杏奈さんは従兄弟だ。」
「え!?」
「これでも関わるなって言う?また殴り掛かってくる?」
「えっ、いや……」
強い口調になってしまった。でも、俺にだってイラッとする事くらいある。だから許してほしい。
「まぁ、気にしなくていいよ。こういう事には慣れてる」
「…………」
フォローしたつもりだったが、金髪ヤンキーは無言で下を向くばかりだった。周りの皆も無言のままだった。
はぁ、とため息をついて俺は教室の扉に向けて歩く。俺が開く前にガラッと扉が開いた。
「おっ、れいと。なんでカバン持ってるの?……え!?なんかあったの?」
涼真もこの教室の雰囲気に気付いたのか、不安そうな顔で俺に聞いてくる。
「大した事じゃないよ。俺はこれから早退するから、またね。涼真」
「お、おう。じゃあな」
俺は教室を出る。やっぱり俺は、高校でも楽しいと思える生活は出来ないのだろうか?
☆☆☆☆☆☆☆☆
玲翔がいなくなった後の教室は、異様な空気だった。涼真が近くにいる生徒になにがあったのかを聞く。事情を理解した涼真は、いまだ床に尻をつき、下を向いている金髪の男子生徒の方に歩く。
「おい、お前は自分の勝手でれいとを傷つけたんだぞ。れいとはただ、従兄弟として白波先輩に高校生活はどうか話してただけだ。」
「…………」
「従兄弟だってことを知らなかったのかもしれないけど、それにしたってこんな事していい理由にはならないだろ!」
「…………」
金髪の男子生徒は無言のまま、うつむいているだけだった。普通はここまで怒らないのかもしれない。でも、涼真はクラスの全員が驚くほどにキレていた。それは涼真が玲翔の過去を知っているからだ。
「……もういい、これからはれいとに近づくな」
「…………」
金髪の男子生徒は、無言のまま取り巻きと一緒に教室を出ていった。クラスにいた生徒達は、普段の姿からは想像がつかないほど怒っていた涼真と、教室を出ていく金髪の男子生徒を無言で見ていた。
「なんで皆、なにも言わなかったんだよ……」
その言葉に誰も返す事ができなかった。昼休み終了を知らせるチャイムが鳴る。気まずい空気のまま、午後の授業が始まった――
☆☆☆☆☆☆☆☆
私には小さい頃から仲のいい男の子がいた。幼馴染みというのだろう。私にとって、彼は特別な存在だった。これからもずっと一緒にいられると思っていた。
でも、それは叶わなかった――
小学生の時、彼はクラスからひどいいじめを受けていた。そのいじめは小学生がやる可愛いものでは無かった。
いじめ以外にも、不幸が連続して彼の身を襲った。彼は少しずつ、けれど確実に傷ついていき壊れていった。そしてついには死にかけた。
私が彼が死にかけたと知らされた時には、彼とはすでに会えなくなっていた。
私は泣いた。身体中の水分が無くなるのではないかというほど泣いた。何日も何日も泣いた。もう会えないのかと、もう彼の隣を歩けないのかと。そして涙は枯れた。
泣き終えた私は自分をせめた。あの時私だけでも彼を助けていたら、少しは変わっただろう。彼が私の前からいなくなる事は無かっただろう。
そして私は決心した。もう一度彼と会う。そしてまずは謝るのだ。あの時助けられなくてごめんと。そしてもう一度、隣にいさせてほしいとお願いするんだ。拒否されるかもしれない、許してもらえないかもしれない。けれど私はもう一度彼とやり直したいから。
そして、彼と再会できるチャンスがきた。彼のお父さんから、彼が聖蘭高校に入学する事を聞いた。私は必死に勉強した。彼ともう一度会えると思うと、それだけでやる気が出てきた。
そして私は聖蘭高校に入学した。クラスが書かれている紙を見て、私は驚くと同時に大喜びした。なぜなら彼と同じクラスだったのだから。
入学式が終わり、私は期待を込めて2組の扉を開けた。でも彼はまだいなかった。自分の席に座り、扉の方をチラチラと見る。そしてガラッと音がして扉が開いた。私はそっちをガン見した。最初は茶髪の男子生徒が入ってきた、そしてそれに続くようにもう一人入ってきた。
昔とは大分変わっていた。でも私は見た瞬間にその人が誰なのか分かった。やっと会えたのだ。
私の幼馴染みの月城 玲翔に――――
面白かった、続きが気になると思った方はぜひ、評価やブックマークお願いします。