幼馴染み
新キャラ続々登場です。次話からはやっとラブコメします。
おかしいと思った箇所、気になる箇所があった場合は教えてもらえるとありがたいです。
「あの人と俺は幼馴染みだから」
「えっ!幼馴染なの!?」
「うん、まぁ3年?4年?くらい会ってないからね。今はそんな仲良くないよ」
「ほへー。そりゃまた偶然」
実際、親から彼女がこの高校に入学することは聞かされていた。でもまさか、同じクラスになるとは思っていなかった。
「はーい。全員の自己紹介が終わりましたね。まだ新生活に慣れていないと思いますが、少しずつ緊張をほぐしていきましょう」
ほとんど聞いてなかった自己紹介が終わり、先生が話し始めた。出席簿らしきものを教卓でトントンとして、少し間をあけてから可愛い笑顔を作った。
「では、今日から1年2組の仲間として仲良く青春を送りましょう!――はい、今日はここまでです。あまり寄り道はせずに帰りましょう」
どうやら今日は午前中で終わりらしい。クラスでは早速友達作りにいそしむ人や、さっさと帰ってしまう人もいた。
「涼真、これからどうする?」
「うーん、友達作りって面倒だし帰りますか」
「賛成」
俺と涼真はさっさと帰る事にした。意外だったのは涼真が友達作りを面倒がった事だ。涼真なら手当たり次第に声をかけると思っていた。
「ねぇねぇ」
俺が涼真の事を意外がっていると、後ろからトントンと肩を叩かれた。知らない声だった。何か用があるのかと振り返る。
そこには、赤茶色の髪の毛をポニーテールでまとめ、ニヒーと笑う童顔の小柄な女子生徒がいた。うん、ちっちゃい。
そしてその隣には、綺麗に整えられた紺色の髪をした女子生徒がいた。美人ではあるが、なにやらオドオドとしていて自信無さげに見えた。
「えっと、何?誰?」
「誰って、さっき自己紹介したじゃん。覚えてないの?」
「ごめん、俺基本聞いてるふりしてたから」
「覚える気ゼロ!むー、こっちは君の事覚えてるのになー、月城 玲翔君!」
「思い出したよ。山田さん」
「ちがうよ!」
外したらしい。ゴホンと間をおき、彼女は二度目の自己紹介を始めた。
「わたしの名前は“速水 陽菜”。桜坂中出身で、好きなものは筋肉です!」
「……筋肉?なに、筋肉フェチとか?」
「そう、筋肉フェチなの。なんなら今、玲翔君の上裸見せてくれてもいいんだよ!?」
「……遠慮しとくよ。気持ち悪いし」
筋肉フェチの女の人は実在したらしい。そして筋肉フェチの女の人は、初対面の人にいきなり上裸になれと要求するらしい。筋肉フェチ女には気を付けろと。俺が高校で初めて覚えた知識だ。
「ごめん、君の名前も聞いていいかな?」
隣で「ねぇ、今気持ち悪いって言った?言ったの?」とうるさいポニーテール山田さんを無視して、隣の紺色さんに聞く。
「あっえっと、私は“雨宮 椿”といいます。えっと陽菜と同じ桜坂中学出身です。よろしくお願いします」
さっきからオドオドしている。人見知りだろうか?俺はとりあえず用件を聞く。
「で、何か用なの?」
「あっ、そうだった。おーい、こっちこっち」
チョイチョイと雨宮さんが誰かを招く。その方向からセミロングの綺麗な黒髪を揺らしながら女子生徒が歩いてくる。
「……久しぶり、玲翔」
「……久しぶり、水瀬さん」
そう言うと何故か頬を膨らませながら睨まれた。なにがお気に召さなかったのだろう?
「へー、本当に幼馴染みなんだー」
「うん、そうみたいだね」
ポニーテール山田さんと紺色さんが言う。なるほど、桜坂中学って水瀬さんと同じ中学か。二人とは友達で、俺と話のを手伝ってもらったとかだろう。
「へぇー本当に幼馴染みだったんだ」
さっきまで無言だった涼真が話に入ってくる。きっと、気まずい雰囲気を察知したのだろう。さすが出来る男。
「そうだよ。あーそうだ、水瀬さんの事は父さんから聞いてるから。その事なら大丈夫だよ」
「その事ってなに?れいと」
「涼真は知らなくていい事」
わざわざこんな気まずくなるようなまねして、俺に話かけた理由がそれくらいしか浮かばない。
「いや……その事じゃないの?」
「ん?そうなの?」
「えっと、…………」
うつむいたまま黙ってしまった。俺はこういう空気が嫌いだ。何とかして、出来る男。
でも、この空気に割って入ってきたのはポニーテール山田さんだった。
「ねぇねぇ、この後どっか行かない?」
「えー、面倒だなー。涼真は?」
「うーん、そうだな。誘いを断るのはなんか申し訳ないし、行ってみない?」
「まあ、涼真が行くんだったら行こうかな」
「よし決定ー!親交会だー!」
どうやら決まってしまったようだ。でも、ポニーテール山田さんが無駄に声を張り上げるもんだから、クラスがざわつき初めてしまった。
「親交会やるの?じゃあ私たちも入れてー」
「俺も参加したい!」
「僕も!」「私も!」「拙者も」
やっぱりこういう事になる。僕も私も拙者も参加してきたら、人多過ぎて入れるお店が限られてしまう。
「ごめん、声大き過ぎた」
「いや、もういいよ。クラス親交会って事で」
「そう?ありがとう」
クラス親交会なら、さっさと帰ってしまった人はいいのだろうか?
「ん?れいと楽しそうだね」
「うん、楽しみだよ」
俺も親交会が楽しみだ。俺の親交会での目標はひとつ。
――――一人称が拙者の人を見つけ出すこと
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