自己紹介
幼馴染み登場です。次話くらいで話が動きだすと思います。
おかしいと思った箇所、気になる箇所があった場合は教えてもらえるとありがたいです。
「いやー終わった、終わった」
「入学式って、案外終わるの早いんだね」
「なー。それより、早くクラスのメンツが見たい」
「可愛い娘いるといいね」
「あたりクラスでありますように」
そう祈るようにして、涼真が1年2組の扉をあける。中は思ったよりも静かだった。初対面ばかりだからだろうか、数人で静かに喋っていたり何もせずにただ席に座っていたりして、騒がしくわない。
机に貼ってある番号で、自分の席を確認する。
25番25番――あった。四列目の後ろから二番目だ。いい席だ。
「よっ!」
本日二回目のよっ!が隣から聞こえてくる。本当に運命で結ばれてるとかなんだろうか?怖くなってきた。
「なんで隣?」
「嫌そうにすんなよ。俺が32番でれいとが25番だからだろ」
「ストーカーの疑いがある」
「しねーよ!」
涼真がそう叫ぶと、クラスの視線が涼真に集まった。
「涼真知ってた?こういう入学したての頃に騒ぐ人って、後々嫌われるんだよ」
「やってしまった」
「まぁ、涼真はイケメンだし大丈夫だよ。あっあと、同中同士で盛り上がって騒ぐのも嫌われるから止めてね」
「承知した」
そんな会話をしていたらガラッと扉が開いて、そこから一人の女性が入ってきた。その女性は黒板の前に立ち、生徒達の顔をぐるっと見渡した。
「1年2組の皆さん、入学おめでとう。私はこれからこの2組を担当する“如月 春香”です。よろしくお願いしますね」
急に自己紹介をし始めたこの人は、どうやらこの2組の担任らしい。隣の涼真よりも明い短めの茶髪で、声も表情も明るい。今だってニコニコしてる。美人というよりは、可愛い女性と言うべきだろう。
皆急な自己紹介に戸惑っているのか反応は「お願いしーます」とポツポツ聞こえるだけだった。
隣の涼真はいつもなら、あの人可愛くない?と言ってくるはずだ。そう思い隣を見たら小さく……可愛い、と呟いていた。どうやらさっきの忠告を気にしてるらしい。
「じゃあ早速、皆にも自己紹介してもらおうかな。一番の人からお願いします」
自己紹介が始まった。ここ『聖欄高校』は一応レベルの高い進学高だ。バカみたいな自己紹介をする奴はいないだろう。
想像通り名前・出身中学・部活などを言うだけの普通の自己紹介で進んでいき、そして俺に順番が回ってきた。
「えー、“月城 玲翔”です。神代中学出身で、部活は入るとしたらバスケ部です。よろしくお願いします」
パチパチとやる気のない拍手がおこる。椅子に座り机に突っ伏す。あとは自己紹介を聞き流すだけだ。
チョンチョンと隣からつつかれる。なんだと、涼真の方に顔だけ向ける。
「変な事しないほうがいいよ」
「わかってる。変な事はしない。ちょっとアレンジするだけ」
そのアレンジが心配なんだ。ウケを狙いにいったらレッドカード、一発退場だ。俺が涼真を心配していると、涼真に順番が回ってきた。
「名前は“舞阪 涼真”です。出身中学はこの隣のれいとと同じ神代中、部活は決めてません。俺とれいとは親友なんで、セットで覚えてください」
そんな事を言ったせいで、皆の視線が俺の方に集まる。隣を見れば、涼真が満足そうに椅子に座っていた。
「なんであんな事言ったの?心配しなくても、俺はずっと涼真といるつもりだけど」
「別にそこは心配してない」
「じゃあなんで?」
「れいととセットで見られたら、女子が寄ってきそうだから」
「意味がわからない」
「分かんなくていーよ」
涼真はずいぶんとご機嫌らしい。なにがそんなに楽しいのやら。
「“水瀬 麗奈”です。」
そう聞こえた瞬間、俺は声のする方向へ顔を向ける。綺麗なセミロングの黒髪、そして驚くほどに整った目鼻立ち、声やしゃべり方から品性が感じられて清楚な大人を連想させた。誰が見ても美人だと言うだろう。
「出身中学は桜坂中学校、部活はまだ決めてません。これから一年間よろしくお願いします」
自分の自己紹介を終え、一礼して椅子に座った。そこでまた、隣からチョンチョンとつつかれた。
「あの人めちゃくちゃ美人じゃない?」
「うん、美人だね」
「もっと嬉しそうに言えよ」
確かにこのレベルは校内にもそうそういないだろう。それほどの美人だ。でも俺はそんな事を思うよりも、警戒の方が強いのだ。
彼女の方をなんとなく見ていたら、彼女が振り返り目があった。少し目が見開かれ、頬が赤くなったと思ったら、いきなり睨まれた。
「お、おいれいと。お前睨まれてるぞ」
「うん、そうだね」
「うん、そうだねって。れいと何かあの人にしたの?」
「したのかもしれないし、してないかもしれない」
「なんだよそれ」
ここ数年、全く会っていないのだ。睨まれる覚えはない。
「で、知り合いなの?」
「うん、あの人と俺は幼馴染みだから」
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