委員会決め
おかしいと思った箇所、気になる箇所がある場合は教えてもらえるとありがたいです。
誤字報告をしてくれた方々、ありがとうございます。
「おはよう、玲翔」
「おはよ」
麗奈の部屋に行ったあの日から、麗奈は俺によく話かけてくるようになった。
「いやー本当よかったよ。玲翔と水瀬さんが仲良くなって」
「まぁね、色々あったから」
「二人がぎくしゃくして、何か変な雰囲気になるから早く仲直りしてほしかったんだよねー」
涼真は俺に、麗奈と仲直りしろとうるさかった。涼真なりの気づかいだろうか。
「はーい、皆席ついてー。SHR始めるよ」
我らが2組の担任、春香先生が入ってくる。ちなみに、2組の間では春ちゃん先生と呼ばれている。先生は少し舐められている気がする。
「今日のHRで委員会決めをするから、皆やりたい委員会を決めておいてくださいね」
今日は委員会決めがあるらしい。体育祭実行委員や文化祭実行委員は、ものすごく面倒そうだからやりたくない。まぁ、実行委員とかは陽キャがすすんでやるだろうし、心配はいらないと思う。
「玲翔、委員会何入る?」
「涼真……俺は地位が手にはいって、同時に楽できる役職を知ってるから」
「何それ?」
「教えないよ」
今日の授業が終わり、HR開始のチャイムが鳴る。春ちゃん先生が黒板に委員会と人数を書いていく。
「はい、じゃあ決まった人から黒板に自分の名前を書いてください」
こういうのはスピード勝負だ。人数制限があるかぎり、その人数がすでに埋まっているところには名前を書きずらくなる。だから俺は一番最初に名前を書きにいく。
黒板に向かって歩いてる途中、めちゃくちゃ麗奈に見られた。そんな怖い目で見ないでほしい。俺は黒板に自分の名前を書いた。
「おっ、月城君は副級長やってくれるんですか?」
「はい、俺でいいですか?」
「もちろんです。よろしくお願いしますね」
まだ決まったわけでも無いのに、お願いしちゃっていいのだろうか?でもこれで、たぶん副級長になれるだろう。
副級長は最高の仕事だ。副級長ってだけで真面目そうに見られるから、ちょっとくらい寝ても評定は安心だろう。そんな得があるのに、仕事はほとんど無い。
実際、イベント事はそのイベントの実行委員が進めてくれるので、級長・副級長が集まって会議なんて事はほとんど無いのだ。何かあっても、まずは級長に頼む。だから副級長の仕事なんて無いに等しいのだ。これはカフェで杏奈さんの確認も得ている。
逆に級長は大変だ。何かあるたびにお願いをされる。先生の頼みだから断る事もできない。なにより面倒なのが、授業に来ない先生を呼びにいく時だ。級長として先生を呼びにいかなければならないのに、クラスメイト達は「行かなくていーよ」だの「後10分待とう」だの文句を言ってくる。
俺は級長になった事が無いから経験はしていないが、あれがそうとう嫌なのは分かる。だからこその副級長だ。
俺が名前を書き終えた直後、麗奈が黒板に名前を書き初めた。何の委員会にするのか見ていたら、俺の隣に名前を書き初めた。
「麗奈さんは級長ですか。こんなに早く級長と副級長が決まるなんて。皆さん、級長と副級長はこの二人でいいですか?他の立候補者はいませんか?」
先生が皆にそう質問する。誰も手を上げなかったので、これで決定だろう。
「誰もいませんね。では二人とも、よろしくお願いしますね」
「「はい」」
副級長になったのはいいが、麗奈にすべて任せるのは、なにか申し訳ない気がしてきた。少しくらいは手伝いをしよう。その後も順調に委員会決めは進んでいった。
HRが終わった後、俺と麗奈は誰がどの委員会に入ったかを紙に書き写していた。初仕事だ。それが終わってから二人で下校していた。麗奈の部屋があるマンションは、俺の帰り道の途中にあるので、たまにこうして一緒に帰っている。
「ねぇ、麗奈。なんで級長になったの?」
「な、なんでってそれは……そ、それより玲翔こそなんでなの?」
「楽だから」
「最低な理由」
最近、麗奈の態度が冷たい事がある。確か昔はけっこう悪口を言い合ってた気がする。少しずつ昔に戻ってるのだろうか。
「最低で結構だよ。まぁ、時々は手伝うから」
「だめ、時々じゃなくていつも」
「え!?それじゃあ俺が副級長になった意味が無くなるんだけど」
「知らない、玲翔みたいな適当な人にはたっぷり働いてもらう」
最近本当に遠慮がなくなってきた気がする。再会したばかりの時とは大違いだ。でも俺は麗奈の弱点を知っている。俺は麗奈の右手を握った。
「な!?」
麗奈が顔を真っ赤にして俺から離れた。やっぱり、ボディータッチが弱点だ。女子の体に触るのは少々抵抗があるが、麗奈も俺をバカにしてくるので少しくらいは許してもらえるだろう。
「麗奈、顔真っ赤だよ」
「――ッ!このバカ、不真面目、変態幼馴染み」
「語彙力が低下してるよ。あと変態幼馴染みは止めてほしい」
麗奈はスーハーと深呼吸をした。そして腕をつねられた。結構痛い。
「次はこんな事にはならない」
「そうですか」
「ねぇ玲翔。そんな事より聞きたいことがあるんだけど」
「なに?」
「バスケ部入るの?けっこう誘われてたし」
「んー、入らないかな。面倒だし」
「そっか、入らないか。じゃあ私もマネージャーはやらないにしよ」
実際バスケは暇潰しでやっていただけだ。大体俺に部活をする時間なんてない。やろうと思ってもできないんだ。
「ね、ねぇ玲翔。その……明日か明後日どっちか暇?」
「うん?んー、日曜ならあいてる」
「じゃ、じゃあさ。日曜日、一緒に遊ばない?」
「うん、いいよ」
麗奈は普段、クールぶって悪口を言ってくるくせにこういう事を言ったり、自分の気持ちを伝える時は、顔を赤くして恥ずかしそうにするのだ。どっちが素の姿なのかよく分からない。
土曜日はあっという間に終わり、日曜日になった。待ち合わせ場所で待っていると、これまたベタなイベントが俺の近くで起こっていた。
そう、ナンパだ――
面白かった、続きが気になると思った方は、ぜひ評価やブックマークお願いします。




