至れり尽くせり
食器を洗い終えて食後の休憩にお茶の準備をしているクロエ。ソファでタブレットを弄ってる雲雀。ん?タブレットを弄ってる?クロエは気になったので雲雀に声を掛ける。
「雲雀ってあんまり常識ない的な事言って無かった?」
「ん?それがどうかした?」
「え?それタブレットだよね?」
「え?うん?そだよ?」
「ニュースとか見ないの?動画とか」
「あー…これ今は紙媒体の本じゃなくて電子書籍版の本読んでるの。これ何か使い方よく分かんないし制限掛けてるとか何とかで健全な物しか見れないようになってるってお父さんとお母さんが言ってたから本のみ見れるタブレットだよ。コレで本を買うのも両親だし」
「へー…そうなんだ」
子供仕様にしてるって事かな?まぁ、雲雀が箱入り娘なのは分かったから良いや。
お茶を入れて雲雀の所に持って行く。茶葉があり過ぎなのと雲雀に紅茶か日本茶かどちらが良いか聞いたらほうじ茶の温かいのって指定してたからお湯沸かしてお茶をたててたんだよね。
「はい。雲雀のリクエスト通り温かいほうじ茶…雲雀ってチョイスが渋くない?」
雲雀の分のついでに自分の分もほうじ茶を入れていた。
「え?渋いかな?」
「見た目西洋人ぽいのに日本食好きな所とか?」
「それ!!見た目のせいで洋食の方が好きって勝手に決められるんだよ!!」
「でも、逢った時パンとサラダにオレンジジュースの組み合わせで食べてなかった?」
「あれは偶!ホントは白米の方が好きなの。新商品出てたから買っただけなんだよあの時は…」
「ふーん…今何読んでるの?」
「経済的観点からおける消費者と供給て本」
「何か難しそうな題名…理解出来てるの?」
「それ酷くない?本の虫だもんジャンル問わず読むよ」
「僕には読めそうに無さそう…」
「クロエ君には恋愛モノとか転生モノをオススメするかな?」
「恋愛モノを勧めて来る所辺りに何か棘があるのは気の所為かな?」
「もっと乙女心に関心持って欲しいから勧めてる…」
赤面しながら言う雲雀。やっぱり初めてはムードが大切だったかなぁと考えるクロエ。でも、ああでもしないと雲雀は自覚しないと思ったからなぁ。
「雲雀はムードを大切にしたいんだね?」
「いや…うぅ…それはそうで合ってるんだけど…何で直球で聞いてくるかなぁ…」
小さくなっていく雲雀。
「雲雀が可愛いから?」
何ともないかの様に応えるクロエ。
「あれ?お茶請けは無いの?」
ふたつの茶飲みを持ってきたクロエに対して雲雀は問いかけてきた。
「さっきあれだけ食べたのにまだお腹空いてるの?」
「何かあるかなぁって思っただけだよ…クロエ君器用だから!」
「雲雀って意外と食いしん坊さん?あんみつ用の求肥が残ってるけど少し食べる?単品でも美味しいよアレ」
「食べたい!!」
ホントに雲雀って求肥好きなんだね。餅みたいだけど柔らかくて違う魅力があるからかな?
「待ってて。すぐ切り分けて来るよ」
ソファから立ち上がってキッチンの方へ向かう。求肥を固めていたトレイから雲雀が食べれそうな量だけ切り分けて皿に盛り付ける。
「はい雲雀。爪楊枝で摘めるサイズに切っておいたから堪能して召し上がれ」
「わーい♪ありがとう♪」
モグモグと頬張る雲雀。求肥は指でも摘めるけど今雲雀はタブレット弄ってるから粉っぽい指で触らせたらダメだろうと配慮して爪楊枝で摘めるサイズに切り分けた。
「所で雲雀?」
「何?クロエ君?」
「今日は何して過ごすの?」
「まだ雨降ってるしいつも通り読書…あ、クロエ君が暇になっちゃうか」
「いや、僕はぼーっとしてても良いんだけど…何処かに身体を動かせる場所無いかなって思っただけだよ」
「それならお父さんのトレーニングルームあるよ?」
「トレーニングルーム?」
「ランニングマシンとかサイクリングマシンとか何か重し乗せるやつとか色々ある部屋」
「そこ使って良いの?」
「クロエ君身体動かしたいんでしょ?」
「確かにそう言ったけど、広い部屋があれば筋トレ出来るからマシンとか考えてなかった…」
「使えるなら使っても良い筈だよ…こっち来て」
お茶をぐいっと飲み干して雲雀について行く。ダイニングキッチンから歩いて廊下を曲がって直ぐの部屋に通された。
「此処がトレーニングルーム。服着替える?その服だと動きにくいでしょ?」
確かにこのシャツは通気性悪そうだし下はシルクのパンツスタイルだ。
「トレーニングウェアとかあるのかな?」
「あるよ。こっち来て」
そう言われて連れて来られたのは最初に来たウォークインクローゼット。そこで雲雀がゴソゴソと黒基調のポロシャツと白のハーフパンツとレギンスを出してきた。
「着替え終えたら教えてねー」
雲雀はそう言ってドアの外に行った。いや?空人も運動するんだね。そっちにびっくりしてたよ。取り敢えずポロシャツを着てレギンスを履いた上にハーフパンツを履く。うん?王様?ホントに運動するんだね。びっくりだよ。着替え終えたので雲雀に声を掛ける。
「わぁ…クロエ君似合ってる!」
「まぁ、普段から鍛えてるしトレーニングウェアあるとは思って無かったから上裸で筋トレしようと思ってたくらいだし…」
「あ、トレーニングルームと別にボルダリングの部屋もあるよ?」
「は?お父さん空人だよね?」
「勿論空人だよ?」
「ボルダリングする意味…」
「腕の筋肉が育つとか何とかって言ってた」
「さいですか…取り敢えずトレーニングルーム行こうか。その後にボルダリングの部屋も行ってみる」
「了解了解!付いてきて」
雲雀に続いてトレーニングルームに戻る。最初は軽くサイクリングマシンで時間潰しでもしようかなってサイクリングマシンに跨ろうとしたら雲雀がちょっと待ってと言うので何だろうと見てると音楽プレーヤーを持ってきた。
「それ何?」
「ただ只管漕ぎ回すより効率上がるってお父さんが使ってる奴でも良かったんだけどコレは私のオススメ曲リミックス」
受け取りイヤホンを耳に付け音楽を流してみると軽快な洋楽が流れた。あー、コレは良いかも。
「これも借りていいの?」
「勿論。ボルダリングの部屋はこの部屋の斜め前だから私ダイニングで本読んで居るね?終えたら声掛けて」
またねと部屋を出ていく雲雀。何かこの王城至れり尽くせりだな…一漕ぎしますか。音楽を流してサイクリングマシンに跨り20kmを基準に設定してトレーニングスタート。