騒々しい朝
明日の朝食の仕込みを終えてか雲雀の部屋に居る。
「ホントにクロエ君て料理出来るんだね!凄いよ」
和食が食べたいとリクエストされたので土鍋でお米を炊くようにしておかずは肉じゃがとおひたしと味噌汁にする予定。
いや、魔法収納袋とかの方が凄いんだけど、そんな事で喜ばれるととても嬉しかった。
「そう言えばクロエ君で幾つ?」
「今年18歳」
「じゃあ3つ違いだね…学校だと卒業の歳なんだっけ?」
「そうだね…卒業しても何もいい事無いけど」
「そうなの?」
そんな会話のやり取りをしていますが、今雲雀のリクエストのせいで抱き枕?にされている。これアウトじゃないの?空人は座って寝るらしく腰周りに抱きついて欲しいと言われた。
コレでセーフなら空人だった友達は何をしでかして出禁になったのか聞きたい。
理性持つかなぁ?
「雲雀苦しかったら言ってね?」
「ううん。落ち着くから苦しくないよ」
そんな雲雀の声がホントの鳥の囀りの様に聞こえてうとうとしてきた。雲雀の羽根に包まれて心地よい上に可愛い声で落ち着く…城にいた時でもこんなに心地の良い時はなかった。うとうとしてたら雲雀が、
「クロエ君眠たい?私も眠たくなってきたから寝ても良いよ〜?」
もう既に意識を手放そうとした時にトドメを刺されてそのまま眠りの淵についた。
翌朝。
僕の方が先に目が覚めたみたいで上を覗くと整った顔が目に入って息が止まるかと思った。
空姫…無防備で天然で優しくて気の利く良い子だ。僕は彼女に何がしてあげれる?そう思いながら見詰めていたらガシャンて音がした。ビクッと雲雀が目を覚ます。
「おはよう雲雀」
「あ、クロエ君おはよう…今の何の音?」
雲雀は目を擦りながら、僕は警戒しながら音の鳴った方へ目を見遣ると知らない空人が居た。金髪で蒼い目の透明な煌めきを放つ翼を持つ空人は怒り心頭の様な感じだった。
「あれ?響夜…どうしたの?」
「どうしたの?じゃねぇよ!誰だよそいつ!」
響夜とか言う無法者は僕を敵視していたらしい。あー、此奴か出禁になった阿呆の空人て。クロエはそれだけで分かった。
「口が悪いよ響夜?」
咄嗟に雲雀は僕の後ろに隠れた事が更に油を注いだ様だ。
「隠れてんじゃねぇよ雲雀。そいつが何なのか言えよ!お前の両親が居ないから来てみたら!!」
若干震えてる雲雀の手に自分の手をそっと添えて響夜とか言う阿呆と向かい合った。
「僕はクロエ・フォン・アルベール。昨日彼女に拾われて世話になった者だけど?それより君こそ何なの?不法侵入だよね?」
わなわなと震えながらキッと睨みつけてきた。
「そんなのどうだって良いんだよ!雲雀の傍に居ていいのは俺だ!」
そうか…羽根者でも恋愛沙汰はあるのか。一応雲雀に聞いてみる。
「雲雀?彼はああ言って居るけど、雲雀に婚約者もしくは恋人は居るの?」
雲雀は首を横にふるふると振る。
「だとさ」
パーンって弾く音が鳴る。僕は無傷…響夜と言う男が何かしてきたみたいだが、どうやら護りの魔法が発動しているらしい。雲雀が僕の背中に何か当ててるから護符か何かだとは思うんだけどよく分からない。
「雲雀!何でだよ!」
「響夜…帰って」
「だから…」
「帰って!!」
悔しそうな顔をして響夜と言う男は割って入って来た窓から出て行った。
「ごめんね…クロエ君」
僕は何もしてないんだけどなぁ…と思いながら雲雀の頭を撫でて居た。
「クロエ君?」
「雲雀は何も悪くないし護りの魔法使って護ってくれたのは雲雀だろ?僕は何もしてないよ?」
「それでも…嫌な思いさせたよ?」
「嫌なんて思ってないし嫌どころか拾われて僕は雲雀が好きになったんだよ?」
「ほぇ?!」
変な声を出しボンっと吹き出そうなくらい真っ赤になる雲雀。
「はいはい。取り敢えず朝ご飯にしようか?」
「あ、うん!」
満面の笑みの雲雀。彼女の笑みを護れる為には何が出来るだろう?