空人の姫
この世界には空人とそうでない者が居る。空人は基本的に身体が小さく翼を持っている、そうでない者は普通の人間の体格である。
私は空人だ。しかも特異例の空人だ。
雲雀…それが私の名前。そんなに可愛いものでは無いのにそんな名前を付けられた。鳥の雲雀が可哀想だよお父さん…お母さん…
空人の翼はキラキラと光り硝子の様な水晶の様なダイヤの様な煌めきを持っている。それに比べて私の翼は特異なのだ。
先ず、羽根元が金色の幹の様な感じだ。それに羽根は空色…普通の空人は透明な煌めきを持っているのに。
私は特異体質の自分が嫌いだった。だからひたすらた引きこもってた。本の虫の私は一生このまま何だろうなと思っていた。あの日までは…
ある日。父と母が旅行に行くと言うので仕方なくお留守番をしていたが、空人同士の両親の旅行は長いらしく家の者が居ない上に冷蔵庫の中身が尽きてきたので仕方なくコンビニに買い出しに行く所だった。空人は自由気ままな者が多く。差別意識も無いので両親も私の事を特異体質とは見ず普通に接してくれているのが幸いだ。
「何食べよ…」
私は雨の中傘をさして歩きながら呟く。ふと先を見ると雨なのに傘もささず座り込んでいる人が居た。
人間?翼がないし空人じゃない?
この地区は空人の住む地域なのに珍しいなと思いながら私は彼の前を通り過ぎた。
通り過ぎて気になって振り向く。微動だにしない彼…凄く気になるので近付いて話しかけてみた。
「あの、雨に濡れてますけど平気ですか?」
男は黙っていた。沈黙が続く…どうしよう。
「…おなか」
「え?」
「お腹空いた…」
あぁ、この場合どうしたらいいんだろ?話しかけてしまったし放っておくべきでは無いろうなぁ…
「あの…この先のコンビニに買い出しに行く途中なんですが一緒に行きませんか?」
「…いいの?」
「声掛けてしまったし、放っておけないので良ければ…」
ニコッと微笑みかけると彼はぼーっと私を見詰めていた。多分?前髪が長くて見えないので何とも言えない。
「行こう?」
と手を差し伸べて彼を傘の中に誘う。彼は一瞬戸惑っていた様子だったけど、直ぐに手を取ってくれた。
「何か食べたいモノある?」
「…カレー」
「了解。私はサラダとパンだから直ぐに買って家に戻ろう」
「?」
「貴方が風邪引かないか心配なんです。此処で待ってて直ぐ買って戻ってくるから」
びしょ濡れの彼をコンビニの前で待たせて飲み物とカレーとサラダとパンを買って直ぐに彼の元に戻った。
「待った?」
「…いいや」
「家来るの抵抗ある?今更言うのもなんだけど…」
「いいや」
「空人って…」
「え?」
「雨の日は出歩かないて聞いたんだけど…」
多分、彼は空を飛び回る空人のイメージがあるんだろうなと思った。
「そんな事ないよ?足もあるんだから歩くよ?」
「そうなんだ…」
意外だったのかな?それ以外質問もされなかったのでてくてくと家路につく。
「此処が家だよ」
「え?」
ん?何に驚いてるんだろ?家は少し周りより大きいかな程度だと思うんだけど…
~彼視点~
雨に打たれていた。絶望して家を出てきてがむしゃらに走って力尽きて此処に座り込んでいる。
お腹空いたなぁ…
ぼーっとそんな事を考えていた。何も持って来なくて力尽きた。そういえば此処って空人の地区じゃないかな…人間じゃなくて空人に産まれたかった。差別意識もなく自由気ままな彼等が羨ましかった。城での生活が苦しかったから余計に眩しく見えた。
時間が過ぎて行く。ふと、目の前に小さな女の子が立っていた。空人だ。でも自分の知っている空人とは違う感じがした。羽根が綺麗だ…
彼女は僕を気遣ってくれて何か安心感があった。でも、何処かで彼女を見た事がある様な気がするんだよな…
そんな事を考えながら彼女を見ていたら彼女はご飯を買いに行く途中だと言う。こんな見ず知らずの者に対して危機感は無いのだろうかと思いながら彼女に付いて行く事にした。
コンビニから向かった彼女の家は空人の王城だった。そう、見覚えのある筈だ。彼女は類い稀な翼を持つ空人の姫なんだから。