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黒き獣と黒の誓約  作者: 夢未多
第3章 勇士
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2、生き残ったロクデナシ

よいお年を……

今回は短いですが、大晦日なので。

 店の主人は改めて詳しく依頼内容を説明する。


 バロッコ国というのは、プリームス帝国に10年前に滅ばされたオークの国だ。この交易都市カラハタスから西にあった国である。国は滅ぼされても、そこで生きていたオークが全て殺されたわけではない。オークは狂暴ではあるが、知能がないわけではない。帝国に協力したオークもいたと聞いている。


 その残党の中に、逃げ延びた部隊があって、盗賊、いや、強盗団として生きている奴らがいる。毎年、一つか二つの小さな村を襲って、略奪をして生きているそうだ。


「衛兵隊や公爵は何をしてる! 」


 アグライアの怒りはもっともだ。


「動いてない。毎年、襲われて、廃村になってからやって来る」


「多分、大きな村とか……大掛かりなサトウキビ畑のある村は襲われてないんだよ」


「そういう村には元から護衛の兵がいたり、賞金稼ぎを雇ったりするからな。実際に衛兵隊も見回りをするらしい」


 砂糖サルカラはこの都市の生命線、繁栄の源だ。大商人が運営しているから護衛兵もいるだろうし、公爵や国に働きかけて衛兵隊を回してもらうことも出来るだろう。


「で、50名近くのオークの元軍人、一部隊を相手にどうしようと? 」


「戦うんだ。その手助けをしてくれ」


 ジョージは当たり前だと話す。真剣だ。決意が見える。だが、世間知らずなのは確かだ。


「もちろん村のみんなも戦う。出来るのか? 出来ないのか? 」


「村の大人は何人いる? 」


 レイヴンの質問に酒場の主人が答える。


「約100名、老若男女合わせて、子供だけを除いてそんなとこだ」


「ギリギリだな」


「そんなのわかってる! 」


「お前は本当に黙ってろ。計算をしてもらってるんだ」


「計算? 」


 オークの戦士二人で人間の戦士三人分、と賞金稼ぎ(ハンター)内では昔から言われている。50人のオーク戦士なら75人の人間の戦士が必要だ。


 そう戦士が必要なのだ。農民が100名と言うのはかなり厳しい。


 村に防御する為の堀や柵を作り上げ、槍などを準備して、まともに戦えるようになって初めて、薄い可能性が見えてくる。


「計算は無理だよ。俺は戦争に出たこともないし、兵法なんてものも知らない。だから……」


「マルコがわかる」


 アグライアの言葉を受けて、酒場の主人マルコが答える。


「戦争には出たことある。だが兵法なんてのは俺も無理だ。だいたいそこに自信がありゃ、俺が指揮を取ってる。俺はな、元々賞金稼ぎをやってた……。味方を、仲間を殺しまくって生き残ったロクデナシさ」


 マルコがヘロンに近寄って、熱く語る。


「仕事をただ果たすだけじゃない。味方を犠牲にしないヘロンに頼みたいんだ」


 レイヴンは渋る。危険過ぎる。農民達がどこまで戦える?


「こいつらが用意できた金は金貨10枚しかない。この仕事なら雇えるのは二人か三人がいいところだ。俺もこの店を売りに出していいんだが、すぐには金にならねえ。だから無理を承知で頼む。俺も戦うし、上手く行ったら、この店も譲る。ヘロンが指揮を取って、村の奴らと一緒に戦って欲しいんだ。故郷の皆がただただ殺されるのを見てるわけにはいかねんだ」


「故郷ってだけかい? 」


「こいつの親父には返しても返しても返しきれない恩があるんだ」


 その口振りに嘘はなかった。マルコは、レイヴン達が受けようが受けまいが、村に行くだろう……。


「アグライア、悪いが付き合ってもらえるかい? 」


 レイヴンには、絶対に守りたい物があるという人を見捨てる事は出来なかった。

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