2、生き残ったロクデナシ
よいお年を……
今回は短いですが、大晦日なので。
店の主人は改めて詳しく依頼内容を説明する。
バロッコ国というのは、プリームス帝国に10年前に滅ばされたオークの国だ。この交易都市カラハタスから西にあった国である。国は滅ぼされても、そこで生きていたオークが全て殺されたわけではない。オークは狂暴ではあるが、知能がないわけではない。帝国に協力したオークもいたと聞いている。
その残党の中に、逃げ延びた部隊があって、盗賊、いや、強盗団として生きている奴らがいる。毎年、一つか二つの小さな村を襲って、略奪をして生きているそうだ。
「衛兵隊や公爵は何をしてる! 」
アグライアの怒りはもっともだ。
「動いてない。毎年、襲われて、廃村になってからやって来る」
「多分、大きな村とか……大掛かりなサトウキビ畑のある村は襲われてないんだよ」
「そういう村には元から護衛の兵がいたり、賞金稼ぎを雇ったりするからな。実際に衛兵隊も見回りをするらしい」
砂糖はこの都市の生命線、繁栄の源だ。大商人が運営しているから護衛兵もいるだろうし、公爵や国に働きかけて衛兵隊を回してもらうことも出来るだろう。
「で、50名近くのオークの元軍人、一部隊を相手にどうしようと? 」
「戦うんだ。その手助けをしてくれ」
ジョージは当たり前だと話す。真剣だ。決意が見える。だが、世間知らずなのは確かだ。
「もちろん村のみんなも戦う。出来るのか? 出来ないのか? 」
「村の大人は何人いる? 」
レイヴンの質問に酒場の主人が答える。
「約100名、老若男女合わせて、子供だけを除いてそんなとこだ」
「ギリギリだな」
「そんなのわかってる! 」
「お前は本当に黙ってろ。計算をしてもらってるんだ」
「計算? 」
オークの戦士二人で人間の戦士三人分、と賞金稼ぎ内では昔から言われている。50人のオーク戦士なら75人の人間の戦士が必要だ。
そう戦士が必要なのだ。農民が100名と言うのはかなり厳しい。
村に防御する為の堀や柵を作り上げ、槍などを準備して、まともに戦えるようになって初めて、薄い可能性が見えてくる。
「計算は無理だよ。俺は戦争に出たこともないし、兵法なんてものも知らない。だから……」
「マルコがわかる」
アグライアの言葉を受けて、酒場の主人マルコが答える。
「戦争には出たことある。だが兵法なんてのは俺も無理だ。だいたいそこに自信がありゃ、俺が指揮を取ってる。俺はな、元々賞金稼ぎをやってた……。味方を、仲間を殺しまくって生き残ったロクデナシさ」
マルコがヘロンに近寄って、熱く語る。
「仕事をただ果たすだけじゃない。味方を犠牲にしないヘロンに頼みたいんだ」
レイヴンは渋る。危険過ぎる。農民達がどこまで戦える?
「こいつらが用意できた金は金貨10枚しかない。この仕事なら雇えるのは二人か三人がいいところだ。俺もこの店を売りに出していいんだが、すぐには金にならねえ。だから無理を承知で頼む。俺も戦うし、上手く行ったら、この店も譲る。ヘロンが指揮を取って、村の奴らと一緒に戦って欲しいんだ。故郷の皆がただただ殺されるのを見てるわけにはいかねんだ」
「故郷ってだけかい? 」
「こいつの親父には返しても返しても返しきれない恩があるんだ」
その口振りに嘘はなかった。マルコは、レイヴン達が受けようが受けまいが、村に行くだろう……。
「アグライア、悪いが付き合ってもらえるかい? 」
レイヴンには、絶対に守りたい物があるという人を見捨てる事は出来なかった。




