4章 人生二度目のデンバト
4章 人生二度目のデンバト
専門店に行った次の日、今日も今日とて学校があり、俺は登校してすぐに咲夜のいる隣のクラスに行って昨日の試合の感想を伝えようと思って立ち上がると後ろから信彦が腕を掴んできた。
「な、なあどこ行くつもりだよ。まさか咲夜ってやつのところじゃねえよな?」
信彦は昨日の背負い投げの一件があってから過剰に咲夜のことを敵対視している。
「ああ、そのつもりだぜ?」
俺がそう返すと信彦が鬼の形相で俺の事を止めてきた。
「バカ、やめとけって。あいつはお前の敵なんだぞ?いつ戦うかわかんねえんだ。馴れ合うなって。」
「そんなこと言ったらお前だって敵じゃねえか。関係ねえだろ?」
「…た、確かにな。」
俺の返しに信彦は言葉を詰まらせていた。
「とりあえず俺行くぞ?」
「わ、わかった。」
信彦の許可を得てから俺は隣のクラスに居る咲夜のところに行った。
俺が咲夜の席付近に行くと咲夜の席の回りはそのクラスの女子に囲まれていて咲夜は女子たちから質問攻めにあっていた。
俺はその会話で何か情報を得られるのではないかと思い、聞き耳を立てた。
どうやら好きな人みたいな話をしているようだった。
「咲夜くんって好きなタイプとかってあるの?」「咲夜くんって彼女いるの?」
そんな質問に対して咲夜はちゃんと返していた。
「俺の好きなタイプは静かで包み込んでくれるような人かな。まあ妹の輝夜以上にそのタイプに合う人とは会ったことがないけどね。彼女の方も同じ理由でいないよ。」
咲夜の返答を聞くと周りの女子たちは「あっ、こいつシスコンのヤバいやつだ。」と思ったのか一人残らず去っていった。
女子たちがいなくなったので俺は当初の予定通り咲夜に感想を伝えるべく咲夜に話しかけた。
「昨日の試合凄かったな。俺尊敬しちゃうぜ。」
「ん?君は…、赤嶺くんだね?」
「へぇー、知ってんのか。霊珸でいいぜ?」
「なら俺も咲夜でいいよ。」
元々、咲夜って呼んでたけどな。まあ公認になったってことで。
「で?それだけかい?」
咲夜が聞いてきた。俺も当初の予定だとそれだけ言ったら帰るつもりだったけど気が変わった。どうせなら宣戦布告してやる。
「いや、まだあるぜ。」
「なんだ?」
「いつ戦うかわからねえけど、俺はお前には負けないぜ。強くなって必ず勝ってやる。」
「おお、そうか。楽しみにしてる。」
咲夜の顔が心做しか綻んでいた。
「じゃあそういうことで。じゃあな!」
それだけ伝えると俺は自分の教室へ戻った。
「お兄ちゃん、いい友だちが出来たね。」
「ああそうだな。だが俺も負けない。」
俺が教室に戻ると信彦は体を強ばらせながら話しかけてきた。
「さ、咲夜、どうだった?」
「宣戦布告してきた。」
「は、はあ!?宣戦布告って、お前。」
「だから今日の二回戦も勝つぞ!」
今日は午後二時から俺のデンバト人生二度目の試合がある。二時なら午前の授業は受けれるのでせっかくなので受けることにした。
そして午前の授業を終え昼休みになった。昼休みになると一回戦目と同じ校舎裏の場所に信彦に連れられそのままスマホで校舎裏の一点と電脳世界をアクセスして俺は電脳世界へ飛んだ。
俺は電脳世界に行くと試合の前室で前回言われた通りスマホから昨日店長からもらった電脳カードをだしてスキャンした。店長からもらった防具は鎧と言うよりは普通の服に近く着る感じも前のやつより軽くて心地よかった。
「すげえ、前回着たやつよりよっぽどかっこいい!だけどこんな薄っぺらくて大丈夫なのか?でもすごいやつって言ってたし試合で試してみるか。」
ちなみに剣の方はすごい斬れ味良さそうで見るからに強そうな双剣だった。
そして時間に近づいたので俺は会場に向かった。
会場に行くとそこには今回の相手らしき男が先に立っていた。その男の装備は昨日店で売っていた量産型の鉄の鎧と鉄の大型の両手剣だった。
そしてそのまま時間になり「初めっ!」の合図と共に俺の人生二度目のデンバトが始まった。
俺はまずこの防具がどれほどのものなのか確かめるために相手の攻撃を防具で受け続けることにした。最初の一撃が俺に入った。しかし全く痛みがない。それどころか防具にすら傷一つ付いていない。
しかし相手の両手剣の防具に当たった部分はその一撃で刃こぼれしていた。
すげえ!なんて防具だ。さすが世界に一つだけの代物。
当てたはずなのにダメージが剣の方に入ってしまっていることに気づいたのか相手の男は次にやけくそになったかのような連続攻撃を俺に当ててきた。
さすがに防具のない顔を狙われたら負けるので俺は双剣を使って受け流すことにした。
俺が相手の連続した攻撃を受けているとその途中にあろう事か攻撃してる側の剣が真っ二つに折れた。
受け流すだけでこの斬れ味か。この剣も中々だな。
それを見て青ざめた男は剣を落としすぐに棄権した。それによって呆気なく俺の二戦目は勝利に終わったのだった。
試合も終わり少し電脳世界の街並みを信彦と歩いていると何かに気づいたのかいきなり信彦が俺を突き飛ばしてきた。
「おいなんだよ」と俺が言おうとして信彦の方を見ると信彦のすぐ後ろには見えにくいが透明の大きな渦のようなものがすごい速さで近づいてきていた。
信彦は俺に「長生きしろよ。」とだけ伝えるとその渦に呑み込まれて消えてしまった。
信彦を飲み込んだその渦はそのまままた消えてどこかへ行ってしまった。
俺は信彦に突き飛ばされたお陰で助かったのだ。
あまりに一瞬のことで何が起きたのかわからず俺は声すら出すことが出来なかった。