3章 転入生は超一流!?
3章 転入生は超一流!?
デンバトの大会にエントリーして一回戦に無事勝利した次の日、正直まだ疲れが取れていないが出席は大事なので学校に登校した。
「おーっす。霊珸!」
教室の扉を開くと俺の席の方からデカい声で信彦が話しかけてきた。
「おす。」
「ん?なんだ今日テンション低くねえか?」
俺が席に着くといつも通り信彦と雑談が始まった。
「当たり前だろ。なんの準備もしてなかったのにいきなりあんなことしたんだ。疲れねえ方がおかしいだろ。」
「そりゃお前の下調べ不足だろ。準備くらいしとけよ。」
「まあそれに関しちゃ確かに俺が悪い。」
「そういや、今日金持ってるか?」
疲れの話から随分と話が変わったな。
「貸さねえぞ?」
「ちげえよ。」
信彦は食い気味に言った。
「俺は今日デンバトの専門店ってやつに行くの。そんでお前も行かねえかって言いたかったんだ。」
デンバトの専門店って言葉で俺の頭にハテナが浮かんだ。
「ああ、デンバトの専門店がわかんねえのか。まあ行けばわかるけど簡潔に言うと武器とか売ってる店だ。」
ああ、あの鉄の塊みたいだった剣の代わりを買いに行くのか。
「なるほどな。まあ行けないこともないぜ?金ならあるし。」
「OK!じゃあ今日の帰りに…。」
信彦は普段から話している途中に廊下をチラチラ見ているのだがその目がじっくりと廊下を見つめ、信彦の言葉も途中で止まった。
「今の見たか?」
なんのことだ?廊下になんかあったのか?
「いや。」
「ちょっと行ってくる!」
「おい、待てって!」
信彦は立ち上がって廊下の方へ走っていった。
俺が教室の後ろの扉に行くと信彦は廊下の真ん中でキョロキョロ見渡した後、廊下にいた少年にぶつかって吹っ飛ばしながらも走っていった。
いつもはそんなに速くないのに何か、多分女子を見つけた時だけ信彦は足が速くなる。
ようやく追いつくとやはり予想通りで、信彦は廊下で女子に話しかけていた。
「君、見かけない顔だね?転校生かい?何組だい?えっ、3組?そうかいということは僕は君とクラスメイトだね。僕は豊川信彦。ちなみにカノジョなら、い・な・い・よ。」
と怒涛の自己紹介をしていた。
信彦は美人に目がなく、美人を見るとすぐに話しかけ今みたいにすごい量の自己紹介をするのだ。
俺が「いつもながらさすがにひくわ」と思っていると信彦の後ろに一つの強いまるで牙をむいた狼に睨まれるような殺気があった。
先程吹っ飛ばした少年のものだ。
その殺気に気づいた信彦の体は蛇に睨まれたカエルの如く強ばった。
「誰だか知らないが他人にぶつかっておいて謝りもしないのか、君?」
「す、すいませんでしたー!」
その少年は信彦の振り返りざまにその小さい見た目からは想像できない力で信彦のことを背負い投げで投げた。
そして背負い投げをしてからかっこよく服を直しながら名乗った。
「俺の名前は咲夜だ。覚えておけ。そこのお前もな!」
そう言って見ていた俺の事も指さしてから自分の教室へ行ってしまった。
そのクールで強い少年は名前までもクールであった。
「ほらホームルーム始まるから早く起き上がれよ。」
俺は信彦の方に手を差し出した。
「お、おう。」
そうしてホームルームに間に合った俺達はそのままいつも通り授業を終えて放課後を迎えた。
「いやぁ、酷い目にあったぜ。めちゃくちゃ強かったし。あー、思い出すだけで冷や汗が出るぜ。」
「あんだけ綺麗な背負い投げ初めて見たぜ。」
「感心してる場合かよ、俺は痛かったんだぜ?」
「そりゃお前が悪いな。」
「まあな。あ、ここ曲がるぞ。」
「おう。」
俺達は信彦の案内の元、デンバトの専門店とやらに向かう為いつもとは違う道で帰っていた。
そんな時ふと信彦が前の方に何かを見つけて急に隠れた。
「信彦どうしたんだ?」
俺が前の方を見ると男女二人が歩いていて一人は朝の咲夜ってやつだった。
「もしかして咲夜ってやつのストーカーか?リベンジでもするのか?」
からかってみようとそう言うと。
「違うよ、輝夜ちゃんだよ。春花輝夜ちゃん!朝会った超美人な娘!」
そう言われると確かに咲夜の隣にいるのは朝見た女子だった。っていうかもうフルネーム知ってるのかリサーチが早いな。
「って、待てよ?霊珸、隣にいるの咲夜ってやつか?」
「ああ。間違いない朝背負い投げ決めた咲夜ってやつだ。」
「えっ?まじで?」
信彦が動揺してるので更にからかってやろう。
「ああ、まじ。あの近さだとありゃ付き合ってるんじゃねえかな。」
「嘘だろ?あの輝夜ちゃんが?転校生なのにもう?しかも咲夜って野郎と?信じたくねえよぉ。」
そうして話していると前にいる咲夜と輝夜ちゃんって子が一緒に専門店に入っていった。
なんであいつらも専門店に?
と思いながら俺達も専門店に入るとレジ横にディスプレイがあってそこに咲夜が映っていた。
それをじっくり見ていると後ろから店員に話しかけられた。
「その子知ってる?春花咲夜くんっていって前の地区ではデンバトの小さな大会で優勝常連のすごい子で今やってる初のデンバトの大きな大会のこの地区の優勝候補だよ。」
「そうなんですか!」
そんなに凄いやつなのか。戦ってみたい、そしたらどっちが勝つかな。さすがに負けるか。
「まあ、僕は君も応援してるよ。赤嶺くん。」
「えっ!俺のこと知ってるんですか?」
「そりゃ知ってるよ。専門店の店長だもん。じゃあ、よかったら咲夜くんの試合見ていってね。」
「わかりました!」
そう言うと店長は店の奥に行ってしまった。
「今の話聞いたか?信彦。いやぁ、咲夜って…」「咲夜が春花ってことはあいつは輝夜ちゃんの…。姉弟か!いやよかった姉弟か。」
俺が咲夜について語ろうとしたらそれを遮って信彦が話し出した。信彦の顔を見ると先程より明るくなっていた。
そんな信彦を後目に俺は咲夜の試合をじっくり見た。
咲夜は鎌を使って戦っていた。こんな武器もあるのか。咲夜のイメージ通りクールだぜ!
そしてそのクールさは試合にも出ていた。もちろん試合は咲夜の完全勝利。
そんな試合を見ていて俺は怖がるわけでもなくむしろ逆に超興奮していた。
あいつとはいつ当たるかわかんねえけど絶対負けねえ!負けたくねえ!そう心に決めた。
咲夜の試合を見終わった後しばらく商品を見ていると店長がこっちに来た。
「あー、いたいた。霊珸くん、帰ってなくてよかったよ。」
「どうしたんですか?」
「いやね。せっかく応援してる君が来てくれたから特別にプレゼントをあげようと思ってね。」
「プレゼント?なんですか?」
「これだよ、これ。」
そう言うと店長は防具と剣の電脳カードをくれた。
「これはね、飛竜の防具と飛竜の双剣。飛竜の硬い皮でできた防具とすごく斬れ味のいい双剣だよ。ここだけの話、特にその双剣は世界に一対しかない激レアなものだから大切に使ってね。」
「そうなんですか!そんなものをくれてもいいんですか?」
「それだけ期待してるってことだよ。どうか期待に答えて春花くんより強くなってね。」
「はい!!頑張ります!」
「じゃあまた来てね。」
そう言うと店長はまた奥の方へ戻って行った。
俺もその後ちょっと見てから信彦と共に家に帰った。
よーし!防具も揃ったし2回戦以降特に咲夜と戦うのが楽しみだ!