1章 大会への決意
1章 大会への決意
俺は玄関を出てから猛ダッシュをして学校へ向かい、いつもなら普通に歩いて20分以上かかる通学路をたったの5分で越えてどうにかホームルームまでに学校に到着した。
5分で到着し、俺は息は上がっているものの心には少し余裕があった。
折角ホームルームに間に合う為に全力で登校したと言うのに8時半になっても担任が教室に来ない事に俺が少し落胆していると後ろの席の男が話しかけてきた。
「おーっす。霊珸!」
俺の高校生活で初めて出来た友人の豊川信彦だ。
豊川信彦はその和風な名前とは裏腹にかなりチャラめな奴だ。
チャラめで運動神経はそこそこなのだがアイツは全くモテない!
なぜモテないのか、恐らく理由はその絶望的な頭の悪さである。
この学校はそれなりに入るのは難しいのだが進級にはめちゃくちゃ緩く、信彦はギリギリの成績で入学し、入学してからも全くと言っていいほど勉強をしていないらしい。
その学力は鉛筆コロコロで入学した俺でも『哀れなやつだ』と同情する程であるのだが当の本人はその結果に対して「俺は出来ないわけじゃないんだ、やらないだけなんだ。」とよく言っている。
そんなやつだ!
そんな信彦が話しかけてきた来たので少し不機嫌な顔で振り向くと、急に信彦はニヤニヤしだした。
「あれ?霊珸くーん?疲れてるみたいだね?登校も遅刻寸前だったし・・・。もしかして、なんかあった?まさか、早朝のテレビ番組でやってるあのジャンケンに遂に負けたとか?いやいや、あの全戦全勝百戦錬磨の霊珸くんに限ってそんなこと、ないよな?な?」
そう言ってきた。
なので「悪かったな。」と返答するとさらに。
「えぇー。まさかの命中ー?やっぱり俺の推理は当たってたってことかぁ。ってかどうせならお前が負けてるところこの目で見たかったなぁー。」
とさらに煽りを加えてきた。
しかし信彦は俺に嫌味を言って煽っているうちに何かを思い出したかのように急に表情が変わった。
「あっ!!そうだったそうだった。」
「どうしたんだよ?」
俺が問うと信彦はバックから一枚の紙を取り出し俺にある質問をしてきた。
「なあ霊珸。デンバトって知ってるか?」
「なんだそりゃ?」
「だと思った!」
そう言うと信彦は先程取り出した紙を俺に見えるように机に置いた。
「なんだそれ、あみだくじか?」
信彦が見せてきた紙には地区別トーナメント戦と書かれた網目のような線が書かれていた。
「あみだじゃねえよ。よく見ろ、線が減ってるだろ?」
「確かにな。じゃあなんなんだよ。」
「これはトーナメント表だ。デンバトの。」
「へぇー。」
よくわかんないけどとりあえず頷いた。
「このデンバトの予選である地区大会が始まるんだ!よかったらお前も出てみねえか?お前程の勝負運があれば絶対に全地区で優勝出来ると思うんだ!」
そう言って目をキラキラさせてくる信彦と相反して勝負は運じゃねえだろと思い、尚且つめんどくさそうなので少し嫌そうな顔を俺はしていたのだ。
それを読んだかのように信彦は更に話を続けた。
「もちろん、優勝者には景品だってあるんだ!しかもその景品ってのがそそられてよー。」
そう言われて少し興味が湧いた俺は少し食いついた。
「なんなんだよ。その景品ってのは。」
「その景品ってのがよぉ。全地区の中で1位になれば何でも願うことを2つ叶えてくれるんだ!」
「なに!?」
その話を聞いて少しだけ俺の頬が緩んだ。
というよりニヤケが止まらなかった。
「どうだ?出るか?まあ、その様子ならもちろん・・・。」
「ああ!出るぜ!」
その時、俺の心はこのわけも分からないデンバトってやつに今までの人生で無いほどに燃えていた。
そして俺はこの時、このデンバトってやつを優勝することを心に決意したのだった。
そして放課後、俺は急いで家に帰ってデンバトってやつにエントリーした。
しかしエントリーした後に俺はデンバトってやつが一体どんなものなのかを全く信彦に聞いてなかったことに気がついた。
だが、エントリーしてしまった今焦ったところで意味がないので明日信彦に聞けばいいや、と自己解決をしてデンバトを知ることを後回しにしてしまった。
これを聞かなかったことによって俺がどうなったかは次を見てくれ!