序章 始まりの音
序章 始まりの音
ここは四王歴250年の第38地区のある家。
「おはよぉ。」
俺の名前は赤嶺霊珸。9月5日生まれの十七歳。どこにでもいる普通の高校二年生だ。
父親は幼い時に事故に巻き込まれただかで死んだため、母さんは俺と姉貴を女手一つで育ててくれた。
「霊珸、今日はやけに遅いじゃない。学校遅れるよ!」
「大丈夫!遅れねぇよ!まだ時間あるぜ?」
俺は姉貴に注意されて反射的に反論してしまった。
俺の家は死んだ父親の残した財産があって比較的裕福だった為、俺は高校に上がる時に一人暮らしをしようとしたのだが姉貴も大学からこっちの方が近い為に越してきて俺は今姉貴と二人暮らしをしている。
ちなみに今の時間は8時20分、俺の高校のホームルーム開始は8時半で全く余裕はないのだ。
「あるって、10分じゃない!」
なぜ俺が今こんなに余裕がなく遅刻しそうなのかというと今日の早朝にさかのぼる。
俺は中学一年の時から早朝のテレビ番組でのジャンケンをしてから学校に行く用意を始めるという言わばルーティーンのようなものがあった。
とはいえ、中学の頃から無敗どころか全勝でいつも勝っているからやる意味は無いのだが、一日の始まりの景気付けにジャンケンをやっていた。
なのだが、今日はいつもと違った。
『ジャンケン・・・』
今日の俺はパーを出した。この場合いつもならテレビのジャンケンはグーを出す、そう高を括っていた。
そして俺がテレビを見るとテレビの画面の手はチョキを出していた。
俺は驚いてテレビを二度見してしまったがやはりテレビはチョキを出していた。
「お、俺が・・・、負けた?そんな、ありえねぇ!」
本来、ジャンケンとは勝つこともあれば負けることもある。
そんな公平なゲームだ。
そんなことはわかっていた。
だがその時俺はテレビのジャンケンに負けたことにとてつもない悔しさを覚えたのだ。
『1位の乙女座の方は普段起きないことが起きそう!ラッキーアイテムは制服!』
そんなこともあり、俺はふて寝という名の二度寝をした。
そうして寝坊してしまって今に至る。
さっき、さりげなく言ったがこの俺、赤嶺霊珸は100回ジャンケンをしたら100回勝つという強度の勝負運の持ち主なのだ!ちなみに入試もマークシートで鉛筆コロコロで合格した。
それなのに今日は何故かジャンケンに負けてしまった。高校合格するほどの運なのに。
本来の俺の勝負運ならありえないこの負けはその後から考えるとこの後に待ち構える戦いの「まえぶれ」だったのかもしれない。
俺は朝食も食べずにすぐに支度し、靴を履いた。
「それじゃあ行ってくるわ姉貴!」
「うん、行ってらっしゃい。霊珸。」
俺が玄関を開けた時の音、それはまるで新しい物語の始まりを告げる、そんな音だったように俺は感じた。(例えるならランドセルを初めて背負った小学生のようだった。ま、そんなことは言う必要ないがな。)