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#4 水も滴るいい死神(前編)

夏休みに入ってすぐの出来事です。

とりあえずほのぼのとした雰囲気の中での彩の心の微妙な動きを感じてもらえれば幸いです。

「ハァ、なんであんたと二人でこう向かい合ってジュース飲んでんだろうの……」


 そう言いながら、ストローでジュースを口に運ぶ。


「しょうがないだろ。折角来たんだから楽しめよ」


 そう言いながら福本は私にばれないように、視線を落としていく。それをなぞるようにおって行くと、私の胸を見ている。水着姿の年頃の女の子が目の前にいるのだから、それはしょうがないことだと昔氷堂さんが言っていた。それにしてもばれない様にしてほしかった。


「馬鹿!」

「ふぎゃ」


 恥ずかしさを隠し、立ち上がりざまに向かい合って座る福本の眉間に拳を叩きこんだ。見ての通り、奇声を上げながら椅子ごと福本は見事に真後ろへとひっくり返った。そして、テーブルの上の中身がまだまだ残っているジュースを右手で持ち上げ、左手を腰に当て一気に飲みほし、叩きつけるようにテーブルの上に置いた。


「彩〜、こっちだよ」

「うん、今行く」


 プールサイドを早足で進み、手を振る紗綾香の傍へ飛びこんだ。勢いよく水しぶきが飛び散り、「もう」と言いながらも紗綾香は笑っている、私も釣られるようにして笑った。


「それじゃあ、彩が鬼ね」


 そう言いながら、私の肩に軽く触れると、紗綾香は流れるプールの人ごみの中へ消えていった。ふと来た方向を見ると福本は未だにのびている。きっと誰かが来てくれると思っていたのだろうが、係員が来たのでびっくりしてただただ謝っている。一瞬だがそんな福本と出会えてよかったな思えたような気がした。だが、苦笑いしながら謝っているその瞳はあの冷たいものだった。最近あの冷たい瞳を見るとなぜだか、少し悲しい。その思いを振り払うかのように大きく息を吸い込み、プールを泳ぎ始めた。

 転校してきてから二週間、夏休み期間になったがそれぞれが部活で忙しい毎日を過ごしている。私個人としては、だいぶ周りに馴染み、下の名前で呼んでもらえるようになった。これだけ油断させておけば、殺すことも容易だろう。だが未だに福本の思考が読めない。弱みを掴めれば幻覚を見せてやれるのだが。結局サッカー部のマネージャーは断ったが、友好関係は続いているので問題はない。だがその埋め合わせで野球部とサッカー部の休みが合うのが今日だけということで、福本と紗綾香、それに国見と奈美恵ちゃんとプールへ来ることとなってしまった。




「そろそろお昼にしよっか?」


 紗綾香がそう言うと、鬼ごっこで逃げていたはずの国見と奈美恵ちゃんがやってきた。つまり逃げずにずっと後ろで私たちをつけてきて、ほくそ笑んでいたのか。ちょっとだけ悔しい。

 ふと福本の方を見るともうあの席からいなくなっていた。


「俺たちも腹減ったってさっきから話してたんだぜ」


 ふと時計を見ると時計の二本の針がちょうど揃って真上を向いている。お腹がすいても当然の時間という訳だ。


「それじゃあ奈美恵ちゃんは場所取っといてよ。あたしと国見でシュンを探してくるから、彩は食券を買ってきてね」


 こういうときに紗綾香は頼りになる。元からグループのリーダー的役割をやっているわけだし、国見と奈美恵ちゃんが従うのも当然だ。


「全員、きつねうどんでいいよね?」


 私の問いかけに全員賛成とばかりに首を縦に振る。このメンバーといるとなんだか気楽で居心地がいい。私が抱いている人間への不快感とは真逆の――――。

 そういえば、あいつ――福本に興味を持ったのも私と同じ冷たい瞳だったからだ。でも今はあいつのあの眼が嫌いだ。なんというかあの時の私と同じように他人を見下し、忌み嫌って……。きっとあいつの人柄ならそんなことはないだろうが、未だにあいつの本音が読めないので確信が持てない。あいつなら、あいつならきっと大丈夫だろう。一抹の不安を断ち切るかのように自分に言い聞かせた。

さて、結局福本は見つからず、彩は買い物に行きました。

普通は荷物持ちで男が行ったりするもんですが、小説なのでご了承ください(笑)。

とうとう次回はやつが登場です。

この雰囲気から、緊迫感あふれる雰囲気に切り替わるのが、面白いので、この雰囲気を覚えていてくだされば、結構楽しめると思います。

アドバイスなどがありましたら、簡単なことでもお願いします。

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