4、闇の魔女の瞳は魅力的 (カイト)
婚約者候補は全部で28名と聞いている
俺が出会った初めての候補者は
ひと言で言うと
真っ黒、、、、である
ライラ·ミルコットと名乗る令嬢は
母上の友人(親友)の娘で
他国、アクア国よりはるばるやって来た
母上の友人ならきっと貴族だろう
しかし、他国の護衛や侍女を国内に入れるのは
かなり面倒な手続きが必要であり
『それなら!!』
と母上が護衛や侍女を手配する約束をし
その準備の段階で今回の計画を思いついたらしい
病で寝込んでいると思い込んでいた私は
母上が友人と計画を立てる為、文を交わしていたなど
馬車での移動中に初めて知ったのだ
しかし、着いてそうそう探すハメになったのは
ライラ本人に伝達が行っておらず
部屋は留守、すれ違う生徒に居場所を聞いても
誰も知らないと言う、、、、
確かに候補者の人数は多い
だが他国のご令嬢なら噂になっていても
おかしくはないはずだが、、、、
一通り敷地を見て周り、
休憩ついでに学院内にあるテラスで
お茶をする事になった
なったのだが、春先であり
入学したての生徒でテラスはいっぱいだった
その要因のひとつは候補者達の為にと
今年からテラスではお茶を出すように
父上(国王)からお達しがあったからだ
多分父上は、母上が不自由しないよう
いつもの味で休息をとって貰おうとの気遣いなのだろう
あの人の視線はいつも母上しか追わない
母上の横に俺が居ても目が合ったためしがない
この歳の息子が居ても、
所構わずイチャイチャしだす
(ああはなりたくないな、、、、)
実はこのテラスの役割はもう一つある
代々、王に使えている執事が
客観的な視線で候補者達を見る為に潜入している
きっと、母上の作戦に1枚噛んでる節があるが
定期的に情報を交換出来るように
たまの休息はここでする事になっている
一階のテラスは主に生徒、使用人、護衛などが多く
候補者の面々は2階部分のテラスに集まる事が多い
それが決まりでは無いのだろうが、
いざこざが起きるよりはいくぶんかましである
執事風の制服に身を包んだジルと目が合い
空いてる席に案内してもらう
本物の執事だけあって良く似合っている
案内された席には先客が1人いた
満席でザワつくテーブルばかりの中
そのテーブルだけ時が止まっているようであった
彼女の装いを見て、確かに一緒に座るのは気が引けた
真っ黒のローブに黒い瞳、黒縁メガネに纏めた黒髪
何よりその雰囲気をさらに黒く印象づけるのは
彼女が読んでいる本だ
黒の魔術書
それは、闇に精通する魔術書で
主にまじないなどが書かれていた気がする
見た感じ13-4ぐらいの少女が
そんな本を手にしていては
美味しい紅茶が飲めそうにない
ジルはここしか席が空いてないのでと
紅茶をお出ししますと一礼して奥へ入って行った
今は侍女のマリアに徹している母上が
「相席失礼致します」
と言って会釈するが彼女の耳に入っておらず
4人で顔を見合わせる、読書に夢中なのだろう
邪魔しないように席に着き出された紅茶を飲む
その間も目の前の少女がとても気になる
良く見ると、黒のローブから見える胸元には
タイやリボンをしていない
一般生徒ならタイやリボンの色で学年が分かる
していないと言う事は、候補者の1人の可能性もある
そう思うとますます彼女から目が離せなくなり
視線は本から離さずに、
「不気味ね、、、、」
そう言って紅茶を啜る彼女を観察していた
黒の魔術書の内容に対して言っているのだろう
自分が今、護衛騎士である事を忘れていたのは
彼女の瞳があまりにも綺麗で魅入ってしまったからだ
彼女の紅茶が冷めているのに気づき
思わず、本で隠れているカップに手をかざす
微量の魔力をコントロールして
紅茶の量を増やし、温める
無意識の内に、身体が冷えてはいけないと
ただそれだけの思いだったのだが、
向かいに座るマリアに腕を取られ視線を戻すと
首を左右に振りため息を着くマリアと目が合った
(やってしまった!)
気づかれる前に元に戻そうと思い振り返った
しかし時既に遅し、、、、
彼女は瞳をまん丸にしてこちらを見ている
そして空を仰ぎ見た、、、、
(魔力を使った事がバレたのでは?)
心臓がドキドキして言葉が出ない
そんな様子に呆れたのか
見かねたマリアが謝罪を述べた
「あらっ
読書の邪魔をしてしまいましたでしょうか?
申し訳ありません」
「大丈夫ですよ!
紅茶の量が増えていて、それに熱くなっていて
ビックリしただけですから!」
「それは、失礼致しました!!
熱すぎたでしょうか!?口の中を負傷しましたでしょうか??」
私達の謝罪に彼女も立ち上がって慌てて応える
見た目どうりに礼儀正しい
きっと優しい心の持ち主なのだろう
そんな彼女がまた固まってこちらを見ている
(やっぱり、魔力に気付いたのだろうか、、、、)
そう思い心境を探ろうと言葉を続ける
「驚かせてしまい申し訳ございませんでした
私達が頂いた紅茶より、冷めてしまっていたようなので
それでは、身体が冷えてしまうと思いまして、、、、」
魔力の事は出さず、どこまで疑っているのか確かめる
固まってただ見ていた瞳が
少し鋭く、疑いの眼差しに変わった
その瞳の変化にさえもゾクリとしてしまう
どう探るべきか迷っていたからか
もしくは、彼女の持つ黒の魔術書のせいか、、、、
言い訳を考えながら彼女の瞳に魅入っていると
「失礼致します」
ジルが新しい紅茶を持って現れた
一部始終を遠目から見ていたのだろう
(この馬鹿坊ちゃんはまったく、、、、)
と言う心の声が聞こえた気がした
ジルの視線が私の紅茶に向かったので手元を見ると
まだ口を付けていないカップの中身は
半分に減り入れたてなのに湯気も出ていない
(、、、、そうか!母上感謝!)
心でお礼を言ってジルの持つカップと入れ替える
マリアとジルの機転のおかげで
魔力を使った事を何とか誤魔化せた
母上の魔力もまた凄い
さすが魔法大国ラン国の元皇女だ
話が一通り収まり、本来の目的である
ライラ嬢を知らないか尋ねる
まさか本人とは知らずに、、、、
長くなりました。、、、、sorry
書きたい言い回しや表現が
場面と合っているのか不安で、、、、
そろそろ電子辞書を買おうかなと、、、、www