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閉じた世界の機甲兵  作者: ライザ
第一章 壊れた世界
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自問




 イヴァンと別れて暫くして、俺は自室で床に就いていた。


 ここはウェアパイロットたちの宿舎。各個人にはそれぞれ部屋が与えられ、そこでの生活が強制されている。

 部屋は一人が生活するのに余裕がある程度のスペースしかない。生活に必要な物はある程度備えられているが、バスやトイレは共用のものを使わなければならなかった。


 俺は瞳を閉じながら、イヴァンとの会話を思い出していた。


 他人に、興味が無い。それは多分、合っている。

 

 戦え戦うほど、自分の感覚が麻痺していくのがわかる。

 人を殺すことに抵抗が無く。

 味方が死ぬことに迷いを感じなくなり。

 日常の一部として、受け入れられるようになっていく。


 目の前で味方が撃墜されそうになっていても、頭の中では次の動きを考えている。救うのではなく、どう動くべきか。その命を駒にして、どう動くべきが最適なのか。それしか考えられない。

 そんな俺が、誰かを大切になんて考えられるのか。


 ドアの向こう側から、男たちの笑い声がかすかに聞こえてきた。

 きっと、酒を飲んで酔っているのだろう。陽気な笑い声だった。もしかしたら、マルスもその中にいるのかもしれない。


 ウェアパイロットは通常、七日に一度ほどの出撃しかない。次の出撃に合わせ、パイロットはコンディションを整えていく。

 翌日に持ち越してしまうほど大酒を飲めるのは、帰投後の時間だけだ。その日以外は調整に支障が出る。それを守れない奴は、大体碌な目に合わない。


 きっと、怯えているから。

 馬鹿をやって、忘れていたい。

 その間は恐怖をしないでいられるから。

 

 この戦争が続くうちはきっと、みんなそうなんだ。


 今は何かをして楽しんでいられても。

 明日には死んでいるかもしれない。


 その恐怖を忘れるために、何かに縋るか。

 もしくは、恐怖を感じないようになってしまうのか。


 そうしなければ、生きてない。


 この世界は理不尽なのだろうと思う。

 けれど、どうすることもできやしない。

 俺の運命は生まれた時から決まっていた。

 脳も、身体も、戦いの為に変えられて。


 選択肢などなかった。

 ウェアパイロットとして育てられ。

 そのためのトレーニングを積み。

 他には何も知らない。


 ただ敵を倒して、他人を蹴落として、生き残る。

 俺はそうすることでしか生きられない。

 皆だって、そうだ。


 だから、自分がたまたま生き残っていることを理解している。

 人よりほんの少し、恵まれていただけ。

 けど、何時そのバランスが崩れるかわからない。

 だからと言って、俺達にはどうすることもできやしないんだ。


 そして、死に怯える奴ほど早く死ぬ。

 どうでもいいと思っている奴だけ、生き残っていく。

 それがきっと、生きるということ、戦いに適してるということなのだ。


 他の事は一切が関係なく。

 生きるために、戦うためだけに集中できる。

 死を目の前にしても。

 死を意識しないでいられてしまう。


 人として壊れているのではないかと――俺は思う。


 それが生き残るというのは優れているということ。しかしそれは、生命として正しいのか?

 それを決めるのは俺達ではなくリブラで――そうすべきと言われれば、そうせざるを得ない。


 理不尽の世界で生きていくには。

 合理的は判断の元で生きていかなければならない。

 それが例えどのようなものでも。

 受け入れて、時には死ななければならない。

 そこに個人の意思など関係なく。

 絶対意志に従って生きなければならない。


 だけど――


 あの夢が現実ならば。

 あの風景には、あの女には。

 こんなことは関係なければいいと、そんなことを俺は思った。

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