表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

(2)歯磨きお化けに連れて行かれるぞ

自室にて

「何だろうなぁ、歯磨きお化けって」

ばあちゃんが口酸っぱく言っていたのもそうだが、その割りには全体的にふわっとしているのも妙だ。


「怖いところか……怖いと言えば数学の先生がやたら怖いんだよな……数学…」


「あっ!数学の予習!」

まさか『怖い』というワードから数学の予習を思い出すとは。もし思い出していなかったらどんな怖い目に遭っていたか分からない。


「これは歯磨きお化けに感謝しないとな……なんて」

俺は鞄から数学の教科書を取り出す。数列の面倒くさいやつだ。


「苦手なんだよなぁ、数学」

シャーペンをかちかちと2回、親指で押す。


~予習中~


「終わった……半分以上埋まらなかったけど…」

時計を見る。


「2時30分!?嘘だろ…今日は早く寝るつもりだったのに……!」

そう思うと急に疲れがきた。体中が早く横になりたいと言っているようだ。


それでも何とか洗面台の前まで来る。


「…………うがい、でいいかな」

いいわけはいくらでもあった。昼はちゃんと磨いたとか、一刻も早く寝ないと明日の朝起きられないとか。でも一番の理由は『面倒くさいから』だった。


「まあ、2日ぐらい磨かなくても虫歯にはならないよな」

俺はコップに水を注いで口に運ぶ。


「ぐちゅぐちゅぐちゅ………ぺっ」

あまり意味は無いと思うが、気持ち多めに口をゆすいだ。


「ふう……」

顔を上げて鏡を見る。


「………………なんだ?」

奇妙な感覚だった。鏡の中の自分と目が合っているような。いや、別に鏡の中の自分と目が合うなんて当たり前のことだ。だって鏡なのだから。


「別に……悪い事してるわけじゃない」

俺はそっと目をそらして自分の部屋に戻った。




「はぁ………今日はめちゃくちゃ疲れた……」

学校からの帰り、バスに揺られながら今日あった出来事を思い出す。


「寝坊して学校には遅刻するし、予習はページを間違えて結局怒られるし…。やっと放課後になったと思ったら、掃除サボってたって説教くらった上に居残り掃除。ったく何が連帯責任だよ………俺はちゃんと掃除してただろ……」



夕食後、俺は自室のベッドに倒れ込む。

「何かもう動きたくないなぁ…………歯磨きは……明日の朝すればいいかな」


徐々に意識が遠のく………………



「………………あれ?」

気がつくと洗面台の前に立っていた。


「いつの間に…?あれ?さっきまで部屋のベッドで…………」

鏡の中に自分がいる。鏡の中の自分と目が合う。


「いや、違う。鏡に自分の姿が映ってるだけだ………。落ち着け、俺。早く部屋に戻って寝よう」


キーン


「耳鳴り…?」

思わず耳を塞いでしまうくらいの不快な音が耳元で響く。ふと鏡を見る。今度は確実に、鏡の中の自分と目が合った。


そして、そいつは俺の目をしっかりと見つめたまま、にやりと笑ったんだ。


「え………?あ…ああ……」

寒くもないのに体がぶるぶると震える。心臓が痛い。


キーン………


「─────はっ!?」

気がつくと俺は自室のベッドの上に寝ていた。


「夢……だったのか?」


いや……違う。ベッドの上に寝ていたので一瞬自分の部屋だと勘違いしてしまったが、そこは俺の部屋とは全く違うどこかだった。


もっと暗い、というより、奥行きも、天井や床すらも見えないほど真っ暗な場所だった。俺は恐る恐る床があると思われる場所に足を下ろす。


ブゥゥゥン


「わっ!」

奇妙な音と共にさっきまで横になっていたベッドが消えた。



「どうなってんだ……?まだ夢の中にいるのか?」

すると、遠くから聞き覚えのある声が聞こえてきた。よく耳を澄ます。


「…………ないと、今日も遅刻するわよ………」

母さんだ。俺に話しかけてるのか?


「母さん?………母さん!!」


かなり大きな声でそう叫んだはずだが、俺の声はその空間に全く響かなかった。いや、響かないと言うよりむしろ、声が吸収されているような、そんな感覚だった。


カチッ


「ん?」

音のした方を見ると、ちょうど鏡くらいの大きさの四角形があった。


その四角形を覗き込む。


「これは……俺んち!?」

それは見慣れた、俺の家の洗面所だった。ただいつもとは逆向き、ちょうど鏡の中から見ているようだった。


「今日は時間あるんだからちゃんと磨きなさいよ-」

母さんの声だ。


「分かってるよ-」

この声は???聞いたことはないような、それにしてはなじみのある声……。


「!?」

しばらくして鏡の前に声の主が現れた。


(俺)だった。


(俺)は歯ブラシを掴む。

ふと見ると俺も同じように歯ブラシを掴んでいた。


(俺)は歯ブラシに歯磨き粉を付ける。

「なっ……体が勝手に!?」


(俺)はにやりと笑うと、歯ブラシを口に運んだ。


「くそっ!どうなってんだよ…!?」


俺は(俺)に操られるがまま歯磨きを終えた。

(俺)は何事もなかったかのように洗面所から出て行った。


カチッ


音と共に四角形が消える。

先程と同じ、奥行きも、天井や床すらも見えない真っ暗な空間に一人取り残される。


「そういう……ことか……」

そこでようやく俺にも全てが分かった。


だが、分かったときにはもう遅かった。遅すぎた。

簡単に書いてみました。


取りあえず歯磨きはちゃんとしましょうね。

歯磨きお化けに連れて行かれると困るので。。。



※伝染性恐怖に引き続き再投稿で申し訳ないです。

次の作品からは大丈夫だと思いますので、よろしければまた読んでやってください…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ