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桜咲くごろ  作者: 萌月 怜
第1話。爽やかな風と春の雪
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5

「、、、自殺でな・・」

「ええっ??自殺、、ですか?」

朝日向は息がぐっと詰まった。

「ああ、それも自殺した奥村さんを雄一が発見したんだ。」

「あっ、、」

瞬間、朝日向の胸がきゅっとしめつけてきた。

朝日向は自分の胸を抱えた。

心臓が激しく鼓動した。


「どうした。朝日向!顔が真っ白じゃないか。大丈夫?」

杉原はびっくりして朝日向に目を配っていた。

「具合悪いの?顔色よくないよ。」

「いえ、ちょっとビックリしただけで、もう大丈夫ですよ。」

「この話はもう終わせる方がいいかもな。」

「いえいえ、もっと聞きたいです。お話、続けてくださいませんか?」

「本当に大丈夫か?」

「はい、大丈夫です。心配しないでください!」

(壮太のお父さん、自殺だったのか・・それも壮太のお兄さんがそれを・・

 うっ、また胸が・・)

杉原には大丈夫だと言ったが朝日向の胸の痛みはなかなか静まらなかった。


「泉美さんは優しい人で笑顔がきれいな人だったよ。

 なのにある日、交通事故で脳を痛めて昏睡に陥ったんだ。

 もうどうにもなれないくらい怪我は酷かったようだ。

 心臓だけ生きていたんだ。皆、だめだといった。

 でも奥村さんは諦めなかったな、、

 その間、泉美さんの治療費で多くの借金を負ってしまってね、

 借金の催促に毎日苦しめられたらしいよ。」

「そうでしたか・・」

「それから借金がだんだん増えて

 家からも出ないといけないようになった。

 それから数か月後、泉美さんが亡くなってしまったよ。」

「ああ、、、」


「そして奥村さんはそれからまるで別人になったらしいよ。

 壮太たちは放置して毎日毎日酒で過ごし、

 大人しくて優しかったあの人が暴力的に変わったんだ。」

「亡くなった泉美さんの事で、悲しくて悲しくて

 耐えられなかったせいでしょうか。」

「その時はそうだと思ったよ。だがそれだけじゃなかったんだ。」

「また何かが・・」


「ああ、その時ね、なぜか借金取りたちの足が途切れたんだ。

 それは多くの借金を返したからだよ。

 そんな大金をそんなに短期間に一瞬、どうやって返せたか皆、訝って思ったよ。」

「確かに気になりますね・・」


「それがね・・」

杉原の表情が歪んだ。

「壮太のお父さんが死んだあの日の夜、友人にこの話を打ち明けたんだ。

 泉美さんが昏睡に陥った時、臓器売買ブローカー接近して来たらしい。」

「ええっ??臓器売買ブローカーですか?、、、あっ、それで、、」

「ああ、仕方なかったんだろうな。泉美さんはもう目覚める見込はなかったしね。

 それで、、奥村さんは延命治療を中断したらしいよ。

 幼い息子たちをこのまま放置するわけにはいかなかっただろう。

 その間、頭では泉美さんともう別れなければならないと分かっていたけれど

 心からはまだ別れたくなかったはずだよな。」

「そうですよね、、」

 

「理由がなんであれ、奥村さんは泉美さんの延命治療を中断したことで

 自分が泉美さん殺したと思われ、毎日毎日自分を厳しく責めただろう。

 その自責の念に駆られたようだ。」


先からすぐにでも泣き出しそうな、だが必死に我慢する顔をしていた

朝日向はこれ以上我慢できず、結局どっと涙があふれ始めた。

「ううっ・・」。

子供のように泣き出した。

「朝日向・・」

朝日向の目には涙が止まらなかった。

(悲しい・・切ない・・・)


「やはり、泣かせたかー泣かないで朝日向。もう大丈夫だから、、」

そんなつもりではなかったが結局自分の話で

朝日向を泣かせた。杉原は困っていた。

そして感情のコントロールができない朝日向のことが心配になった。


まるで自分の事のように悲しげにすすり上げて泣く朝日向を

痛ましく眺めていた。

「なん、、ででしょう、、うっ、何でこんなに悲しいんでしょうか、、

 何でこんなに胸が痛いんでしょうか‥教えて・・ください・・」

朝日向は杉原を見つめた。

「それは、、朝日向が優しいから・・だね。」

優しい笑顔で言った。

そして杉原は泣いてる朝日向の背中を叩きあって優しく慰めた。


朝日向は杉原の優しさで胸がだんだん落ち着いてきた。

朝日向は涙が溢れて顔は涙、鼻水塗れだった。

「はい、ティッシュー」

「ご、、め、んなはい・・しくしく」

しばらくの間悲しく泣いた朝日向はもう落ち着いたようだった。

「もう落ち着いたか?」

「はい・・」

「へえ?まだしくしくしてるのに??」

「はっ、、そ、そんな・・・」

気が付いたら大人の男である自分が他人の前で

こんな無防備に見苦しく泣いてる姿を見せていた。

朝日向は急に恥ずかしくなった。そしてその恥ずかしさでうつむいていた。


杉原は恥ずかしげに顔を赤らめている朝日向が可愛く見えた。

「はは、冗談冗談。もうスッキリしただろう?」

「はい。お陰様で何かスッキリしました。」


「朝日向は本当に優しいんだよね。」

「いいえ、僕はただの泣き虫ですから・・なんか恥ずかしいですね、、」


「あ、朝日向、、え、、、と、、一旦、悪い!」

「え?何が、、ですかぁ?」

涙を拭きながら杉原を見つめた。

「実はね、、」

「はい。」

「明日、、引っ越しできなくなりました。」

「あ、そうですか・・え?えええええっ???」

「いやーそうなったよね。あははー」

杉原はぎこちない笑いをしていた。

「ああぁーーーーっ、壮太!!!」

「あ?壮太??」


「あぁぁぁ、今、あははする場合じゃないですよ。」

「ご、ごめんなさい!!」

「どうしようーーーー壮太との約束!!!あーー」

朝日向はそわそわしていた。

「朝日向さん?ちょ、ちょっと落ち着いたら??そうだ。そこまで困ることじゃない。

 そうそう。そうじゃないんだよね。ナハハ・・多分・・」

朝日向は引っ越しできなくなったことより壮太の事が大変だった。

(そ、壮太!本当にどうしようーーーー

 何か、ただでは済まさないような‥っていうか壮太怖いですよーっ!)







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